わがまま。(1/3)



『欲求不満』という言葉は聞いたことがあるけれど、もしかしていまの自分がそういうことなのか。

 すごい夢をみてしまった。はっきりとは覚えていないけれど、あれはたぶん、抱かれていたのだと思う。隣で穏やかに眠っている旦那さまに。


 あたりはまだ真っ暗で、丑三つ時を待つ頃。なんだかこわくなって、旦那さまに抱き着いた。

 最後に枕を交わしたのは、いつだったっけ。

 珍しくお互いのタイミングが合って、いざ、となったときに月のものがきていることに気がついて、――だから、それからもう2週間は経っているはずで。それより前になるから、もうひと月くらい経つのかもしれない。


 結婚してすぐはお互い初めてだったこともあって、よく求めてくれた。月に、ううん、週に何度か愛し合った。

 私が「こわい」と言えばやめてくれたし、無理やりに、ということは一度だってなくて。それでも私のタイミングを探るように、求め続けてくれて。

 それが最近は――お互い仕事が忙しいこともあるけれど――なかなかそういう雰囲気になることが少なくて。

 ――私が未だに「こわい」なんていってしまうのが原因なのかな。

 本当はね、もっと触れてほしい。もっと愛してほしいの。その言葉が言えなくて。



「たかくん……」



 さみしいよ。
 小さく呼んでみても彼は眠ったまま。「ん?」なんて寝言をいってる姿がかわいい。

 ごめんね、なんでもないよ。

 どうしたい、どうされたい、と問われてもよくわからない。

 抱かれたい、というよりも、もっと強く抱きしめてくれたら、それだけでたぶん、嬉しい。

 無防備な唇に、啄むような口づけを。

 起きちゃうかな、大丈夫かな、なんて。

 本当は起きてほしい。
 大好きな深緑色の瞳を見せてほしいの。ねえ、旦那さま。


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