act.4 アキサメ
俺の一生はステレオタイプのように思えてきた。
月曜になれば「だるい」とつぶやき大学へ行き講義を受け、部活で汗をかく。
火曜も水曜も木曜も金曜もまた同様。部活が休みの日はちょっとだけ眠れる時間が増えて嬉しい。それだけの。
アンニュイ気分でバイクのハンドルを握り、空を仰ぐ。真っ青にうろこ雲が少々。
秋風が顔を掠める。きつい日差しの中、その冷たさが心地好い。
「1限からとかだる……」
……また無意識に言ってしまった。
どうして月曜の1限に必修の授業が組み込まれているのだろう。おかげでサボれない。
大学カリキュラムに悪態をつき、バイクを停めゴーグルとヘルメットを外した。
「あ!いっちゃんおはよー。バイクかっこいーね。今度乗せてっ」
「うげ……」
朝一番からこいつかよ。
寝起きの頭にマシンガントークはきつい。
頭をめちゃくちゃに、リズムもばらばらで、ひたすらにがんがんがんがん叩かれているような気分になる。頭の中を整理する余裕もないほど。
「『うげ』っていっちゃんひどいなあ。ねえねえ、教室まで一緒に行こー?」
口元のほくろを歪めて笑う。
黒い髪が揺れる。
そこに立つのは、かつて壊してしまった彼女だった。
心を壊してしまったわけではない。
彼女の未来と希望と幸せを壊してしまった。ことごとく打ち砕いてしまった。
頭も、ぐらぐら揺れるけれど。それが俺の胸にずどんと効いて、ため息が漏れた。そして歩き出す。
「あ、もう!歩くの速い!」
「んだよ。ついてくんな」
「教室一緒でしょ?」
数歩後ろを、足を捻挫したときのようにひょこひょことついてくる。
仕方なく振り向き、待った。