そして彼は、割れ物を扱うようにやさしく、私をあたたかい胸に包む。
「……?」
「亜子って小さい」
「好きで小さいんじゃないもん」
膨れながら見上げると、「ごめんな」って笑いながら謝るきみの悪い癖。
その笑顔に私がついつい許しちゃうこと、知ってるの?
しばらく、じっとして。
彼の広くて恰好いい背中に手を回して、少し、彼の誇り――素敵な誇り――を撫でた。
それから壱くんは、思い出したように口を開く。
「髪、三つ編みにしてあげようか」
「うん」
「じっとしてろよ」
くしで梳かれるだけでもふわふわとした気分になる。
きっと、好きだから?
あたたかい脳内麻薬ってやつがいっぱい出てるのかな?
それに堪らなくなって、
「あのね、壱くん」
「ん」
「好きだよ」
「なにが」
「三つ編み」
「ははっ」
ずっとずっと好きだよ、壱くん。
だって、私の初恋の人だもん。
でも、――今日でお別れだね。