なあ、暇? なんてメールを送ろうかと思いもしたが、よくよく考えれば暇なわけないかと思い、そのまま携帯電話をベッドの上に放り投げた。そしてその上から自分もダイブする。スーツのままだとあれだから、上だけ脱いでネクタイを緩めた。
 最近、あいつに会ってないなあ、なんてふと思った。別に恋人同士でもないわけだから、会えないからなんだってことはないが、それでもたまには会ってみたくなるものが親友だろう。小さな居酒屋でいい。会って酒を交わしながら話して酔って、肩を組んでお互いを支え合いながら帰路に着く。そんなことはもう随分前にやったきりで、なんだか馬鹿騒ぎしたくて堪らなくなってくるのだ。それに、あいつと話していると凄く心地が良い。
 女癖が悪いと言われるほど女を取っ替え引っ替えしてきたが、やはりどれもそう長くは続かなかった。原因は居心地の悪さ。どの女も俺をわかろうとしなかったのだ。会社から疲れながら帰ってきているのに女は言い寄ってきて、いつからか俺はそんな女達から自ら離れていった。恋愛なんて馬鹿らしくて疲れるだけだった。社会人になると、恋愛なんてものじゃなくて、要は想いを寄せる相手が居心地の良い場所になるかってことを学んだ。
「そう考えると、やっぱり俺はあいつに惚れ込んでんのかな」
 何も言わなくても理解し合える、幼なじみ。目を合わせれば、自ずとみえてくる相手の気持ちを理解し、尊重出来る相手。
「やっぱ、会いてぇな……」
 そう思って、シーツの上に横たわる携帯電話を手にした瞬間、それは震えた。
 メールだ。そして差出人は今からメールを送ろうと思っていた相手だった。

 ねえ、暇? 短く一言で纏められた文章に、俺は小さく笑った。ああ、やっぱお前も俺と同じ気持ちだったのか。
 うん、暇。
 そう送ってから、俺はニヤつく顔を抑え切れずにメール画面を見てはまた笑った。
「やっぱ、俺、お前のこと好きだわ」




111018
社会人パロ‐とっこ



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