俺とななしは産まれた時からの幼馴染みでそれはそれは長い時間を共にすごした。正直家族と近いか、同じくらいか、もしかしたらそれ以上の時間を共にしてきたと言っても過言ではなかった。
それ故距離感がおかしいというか、色々と軽いのだ。やり取りが。
彼女に恋愛感情を持ち想いを伝えた時も「付き合わない?」「いいけど」なんてまるで放課後何処行くくらいの軽さで交際がスタートしたのだからもう笑うしかない。
告白だけじゃない。交際も同棲もソウイウコトも全部がなあなあというか軽口をたたくようにポンポンと進んでいった。
しかし、しかしだ。いくらなんでも次くらいはしっかりとするつもりだったんだ。そう、”だった”んだ。

「なぁななし、俺達結婚しない?」

正直やっちまったと思った。机越しに俺と向かい合って座りテレビを見ていたななしはキョトンとした顔でこちらを見ている。
どうしてこうなった。何日も前から考えたプロポーズの台詞は言おうとした瞬間に頭のどっかから吹っ飛んだし、密かに用意していた銀色の指輪も渡すタイミングを見失ったし、そもそも何故居間でダラダラとテレビを見ている時に言ってしまったんだ。ホント何でだ俺の大バカ野郎。
1分にも満たない時間でぐるぐると後悔と自責の念が脳内に渦巻く。これはななしに殴られても文句は言えない。いや殴られるならまだマシか、嫌われても仕方がない。
なんて考えに行き着いた辺りでななしが「ヒューは相変わらずムードがないねぇ」なんて苦笑混じりに言った。

「ふつつかものですが、よろしく」

次に来た言葉に思わず目を丸くする。そんな俺の反応を見てななしは「なんだよヒューが言い出したんだろ」と唇をとがらせた。

「いや、キレられるかと思った」と正直に言うとななしは意味が分からないとでもいう様に首を傾げてから、気付いたのか「あぁ、そういうこと」と笑った。

「一体何年ヒューと一緒にいると思ってんだよ。そんな事くらいで一々目くじらたてるわけないだろ」

「それとも冗談だったのか? 」と返され首を横にぶんぶんと振ると「なら良いだろ」とまた笑む。

「良いのかよ」

「良いんだよ」

「ヒューが思ってるよりずっと、ヒューの事好きだからね」と照れた様子もなく言ってのけるななしに、これは一生勝てないな、なんて。


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