人を励ます言葉って恐ろしいものだと思うんです。言い方を間違えれば、励ます筈だった人の心に大きな傷が残ってしまいますから。だから私も、みなさんのことを励ます時、ついつい言葉に詰まってしまうんです。これを言ったら傷つくかな。これを言ったら怒るかな、とか、そういうことなんですけど。
なんにせよ、励ます言葉っていうのは強い言葉ですから。優しくてあたたかい言葉だけを投げかけていれば、誰かの心に響くなんてこと、そんなこと私は無いと思うんですよ。だから強い言葉を誰かに伝えようと思ったら、それは良くも悪くも相手の感情に触れてしまうものなんですよね。
強い言葉を投げかけているとき、私は相手が真っ黒に見えてきます。まるでその人は深い深い谷底にいて、私は何も見えない谷底に声を落としていくんですよ。時にはその言葉によってその人は谷底から這い上がってきてくれますけど、時にはその言葉によってその人はまるで風船のように割れてしまう時だってあるんです。這い上がってくれた時はもちろん嬉しいですけど、逆に這い上がってきてくれず風船のようにその人の心がぱぁんと割れてしまった時はああ、どうしようってもう何回も後悔してきました。あ、けど一番つらいのはたくさん言葉を投げかけても、するっとその人の横を通り過ぎて、その人の私が見えない暗い谷底まで言葉が落ちて行ってしまうことですかね。だって、その人にとって私の言葉なんてどうでもいいんだって思ってしまいますから。
え、違う? そうじゃない? え――と、そうですね。確かにそうじゃない場合もあるかもしれません。相手にするんじゃなくて、その逆のパターンというか。私のことを下に見てどうでもよい存在だと処理しているんじゃなくて、神様のように勝手に自分とは違う所に押しやって、それで話を聞いてくれない耳を傾けてくれない人だっていると思うんですよ。
けど、結局それって、見下しているのと変わらないって私は思うんです。自分とは違う存在だって勝手に決めつけて、勝手に思想を押し付けて、そこに一体「私」はどれだけ存在するんでしょうか。勝手に評価されて私がどんな発言をしてもその人は受け止めたふりをして、にこにこ笑って、それで、私の話を思ってあなたは一体どんな風に考えたんですか? って尋ねた時に「凄かったよ」とか「良かったよ」とか肯定文ばかり並べられたら、もうその人と対話する意味を失ってしまうと思うんですよ。人が人と何かを分かち合いたいとき、結局はお喋りをする。それ以外の選択肢は残されていないんじゃないでしょうか。対話しないと、今の所、自分以外の誰かとコミュニケーションを取るのには限界がくるってそう思うんですよ。

あ、困った顔してますね。万理さん。それならなぜ俺と話すのかって聞きたい顔をしています。最近、Re:valeの皆さんと再会してからですね。今まであなたがどんな顔をしているのか、私にはまったくわからなかったけど、その表情の機微が少しだけ読み取れるようになったんですよ。
私がこうやってあなたと喋るのは、私が昔の私ではないからです。ほら、はじめに言ったじゃないですか。人を励ます言葉って恐ろしいものだって。強い言葉って怖いものだって。昔は、誰も励ますことが出来なかった。私は足が竦んで誰かが泣いていてもその人と一緒に泣いてあげることしかできなかった。けど、IDOLISH7と出会って少しだけ変わったんです。誰に強い言葉をぶつけるのは、それは人を傷つけるかもしれない。自分を傷つけるかもしれない。だけど、言わない方が、だめなんだって。だって、言わない気持ちなんて無いのと一緒じゃないですか。傷ついても口にしないと、その人と本当に関わっていこうと思ったら無理じゃないですか。相手のことを大切に思うからこそ、喋らなきゃいけない伝えたい自分の気持ちってあると思うんです。
だから、こうして、万理さんに私は自分の気持ちを伝えてるんだと思います。

っ――ああ、そうですね。私が万理さんに対してこうして必死に食らいつく理由なんて、傷ついてもいいと思える気持ちなんて、きっと分かってもらえないと思います。
それでもいいます。
私は、ずっとあなたのことが好きなんです。すっごく、すごく好きなんです。あなたから見たら私は幼い中学生の頃の子供だった姿とまるで変っていないかもしれない。こんな、あなたが傷つくことを前提に、自分が傷つくことを当然として話すのは幼稚で醜い行為なのかもしれない。
けど、それでも言いたかった。
私はあなたが好きだから、私の気持ちに向き合ってくれない万理さんのことが凄く寂しく思える。どうしようもなく、悲しい気持ちになってくる。私の好きな人がなんで、いつも少しだけ元気がないんだろうとか。自分の気持ちを誰にも言えないんだろうとか。そういうことが寂しくて切なくて私が埋めてあげたいって思うのに、私じゃどうにもならなくて。
けど、言いたいから。
言いますね。
私はあなたのことが好きです。あなたにいつも笑っていて欲しい。本音を誰かに話すことは決して怖くないんだと、そう伝えたいんです。