及川と岩泉 | ナノ
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自室のベッドで、うつ伏せに寝転んで雑誌を読んでいると、及川の吐息が首筋にあたった。腰のあたりに尻を落とされて、上から押さえつけられるような恰好にされる。
気持ち悪いことするな! と首筋を手のひらで覆うように隠し、及川の顎を押し返す。

「のしかかってくるな!」

苛立ちを孕んだ声色で告げるが及川は気にする素振りなく、俺の手に噛みついてきた。甘噛み程度だが、舌を皮膚に擦る様に触れられて、味蕾のつぶつぶが当たってくすぐったい。俺は眉を顰めながら、及川を睨みつけ、離すように促すが舌で俺をからかうのを止めなかった。

「雑誌読むの止めてやるから、キモイことしてくんな」
「え――もう、遅いって」

岩ちゃんは判らず屋だなぁと小言を漏らしながら、及川は既に勃起しているチンコを俺の背中に押し付けてきた。

「すでに勃起してるけど」
「岩ちゃんの上に乗ってるとつい興奮しちゃって」

笑みを漏らしながら、だからしても良いでしょう? と及川は俺の顔を覗いこんだ。眼球が輝いている。及川の無駄に長くて苛立つ睫毛がぱさぱさと影をつくりながら、俺の頬にあたる寸前まで近づく。
唇を唇が合わさって、舌先が俺の中ににゅるにゅると入ってくる。気持ち悪いのと、熱さを孕んだ及川の動きがなんとも言えない欲望を俺の中で駆り立てる材料になる。
唇から顔を離した及川は自慢げに笑いながら、こちらを見た。コイツがこうやって欲望にぎらぎら眸の奥を燃やして、こちらを見つめる目は嫌いじゃねぇ。

「ね、しよ。岩ちゃん」

本当に嫌なら俺を突き飛ばしてよと及川は尋ねる。ズルイ奴だ。狡猾で意気地なしで、この状況の俺が断れないと知りながらも、言質を取りにかかる。あとで俺に何を言われても同意だったじゃないか、というために。俺の男としてのプライドを崩す為に。
けど、甘いな。別に俺は男としてのプライドを捨てるつもりはねぇよ。わざわざテメェに抱かれてやってんだろうが。タコ。勘違いしてんじゃねぇぞ。

「しょうがねぇから、付き合ってやるよ」

俺がそういうと、及川は満足そうに口角をあげて、俺の首筋に口づけをした。首筋から耳朶の後ろまで舌が登ってくる。わざわざ俺が耳朶の後ろを刺激されることを嫌っていると知っての行動なのだから、性質が悪い。
耳朶の後ろを舌でなぞられると、唾液の粘着力のある音が鼓膜を通って大きく聞こえる。自分の下半身が僅かに反応しだし、身体が揺れる。

「岩ちゃん、服脱がしてもいい?」
「自分で脱ぐ」

だからいったん退けというと、大人しく及川は俺の上から退いた。
服を脱ぎ捨てる。下半身もパンツ以外は。

「岩ちゃんパンツは?」
「お前の楽しみ残してやってんだよ」
「それだったら最初から脱がせてくれてもいいじゃない」

そんな恥ずかしいこと出来るかと睨むと及川はまぁ良いけどね、と笑った後、再び、うつ伏せに寝転んだ俺にキスをしてきた。
今度は背骨に合わせて舌を動かされ、指先が乳首を掴んだ。乳首が気持ち良いなんて、普通にオナニーして女子セックスしているだけじゃ気づかなかった。及川に触れられて、初めてここが、もどかしく気持ち良いのだと判った。
指先でぎゅうっと握られ、思わず腰が浮く。

「っ――」
枕に顔を押し付けた。
背面座位なのは気紛れだが、枕があるから声を押し殺しやすい。及川は俺が声を潜めるのを嫌がるけど。知ったことではない。

「岩ちゃんの乳首勃起してきた」
「っ、あっそ」
「生意気だなぁ。ほら、ペニスも」

膨らんできたペニスに触れられる。パンツの隙間から手を侵入させて先走りで漏れている俺のペニスに触れた。及川の艶やかなセッターとして、あのボールが放たれる指先が俺のペニスを触っているというだけで少し反応する。奥歯を噛み締め、睨み付け、達してしまうように腕を回す及川の行動に止めろというが、否定するように首を振りやがった。

身体を回され、正常位にされる。汗に滴る顔が良く見えて、なんだ、はじめからこっち向いておけば良かったぜ、となる。及川の欲望で歪む顔はもっと見ていたいが、自分の顔は見られたくないというので、困ったものだ。
まぁ、それは及川も同じなので、俺が及川の興奮した顔をニヤニヤ意地悪そうに見ていると判ると「岩ちゃんったら趣味良いよね」と嫌味を言ってきた。
下着をずり下ろされ、俺の膨らんだペニスが見える。
及川が生唾を飲み込んで、俺の窄まりへ手を伸ばした。

「おい、ローション」
「先走りだけで大丈夫そうじゃない?」
「なんでもいいから、慣らせ」

我儘だなぁ岩ちゃんは、といいながら及川はベッドサイドへ手を伸ばし、ローションへ手を伸ばし直接後孔へと押し入れた。

「つめてぇ!」
「ちょ! 足暴れないでよ!」

俺の綺麗な顔にあたったらどうすんの! と及川が叫ぶので、知るか! と言い返す。生意気な岩ちゃんにはと指を突っ込まれた。及川の指先が俺の浅い所を引っ掻き回す。浅い所が俺の苦手な場所だってことを、知ってる顔だ。
喘ぎそうになるのを、二の腕を噛んで我慢する。

「喘ぎ声きかせてよ」
「っ――嫌だよ。てめぇも喘ぐころになったらっ、考えてやる」
「じゃあ、早く入れさせてね」

にっこりと柔和な笑みで及川が俺を脅す。
二本目の指が隙間から入ってきて、肉が引きちぎられそうな痛みを僅かに伴いながら広がっていく。
この皮膚が広がって、後孔のなかにはいっていく量が増えていき腹のあたりがどんと重くなる感じは慣れない。及川のペニスが入ると、もっと腹が重くなって、頭の中が瞬きを繰り返すほど気持ちが良い。

「もう、良いかな?」
「っ――」
「あはは、顔真っ赤だし良さそう」
「って、てめぇも顔真っ赤だろ!」

俺の中に入りたくてたまらないって顔でこっちを見つめてきてる。
いいね、その顔。もっと見たくなる。俺のこと犯したくて仕方ないんだろう。早く来いよ。俺もお前が俺の中で乱れる顔を見たい。お前のその余裕が崩れて、欲望が剥き出しになる時の顔を。

「はぁっぁ――」
「あぁ、あ岩ちゃんっあ――きもちい」

及川のペニスが俺の中に入ってくる。中で肉が引き摺られるような感覚が起こって、腰が重たい。粘膜が絡まり付いて及川のペニスを咥えこんでいる。何回も、及川のペニスを咥えこんできたが、未だに俺の器官は苦しそうだ。けれど、最初の頃とはくらべものにならないくらい快楽を見出すことが出来る様になってしまった。

「はぁっぁ、及川」
「っぁ――ね、岩ちゃんってここがいいでしょうっ」
「っぁ――イイっぁ」

腰骨を掴まれ、及川が激しく打ち込んでくる。
皮膚と皮膚がぶつかり合うような音を出す。俺も負けずと、及川を気持ちよくさせるため、腰を動かした。
無茶苦茶に絡まり合う瞬間は嫌いじゃない。
寧ろ好きだ。
互いの欲望が行き来しあい、俺の中に大量の熱が放出される。達するのは何時も一緒で、たいてい、一度じゃ収まりきらねぇ。



結局、翌日までセックスに励んでしまった。
両方の親が旅行に出かけている時で良かった。まぁ、そうじゃなかったら、あんな声をあげて家でセックスなんかできるわけがねぇよな。金溜めてホテルに行くか、どこか別の場所探す。

「岩ちゃん、おはよう」

乙女みたいな声を出しながら及川が俺に告げた。

「お――」
「あ、岩ちゃん」
「なんだよ」
「誕生日おめでとう――」


日付を見ると確かに俺の誕生日だった。
素で忘れていたので、瞬きをしながら及川を見つめる。

「今年もずっと一緒にいてね」
「気が向いたらな」

そういわれるのも、今年で何回目だ。気が遠くなるほど聞いてきた言葉なので今さらだ。
気が向いたらなと常に返答するが、俺も別れる気などさらさらないので、来年も聞くことになるだろう。