月島と山口 | ナノ
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汗ばんだシャツが皮膚にくっついた。額から滴が流れ落ち、息が荒くなる。
窓辺から南風が吹き抜け、熱気を孕んだ部屋に涼しさが通り過ぎる。閉じてしまえば、声を押し殺さなくて済むのだが、家主に冷房を入れる許可を貰うのは一苦労だろう。幼い頃、二人で遊んだ記憶がある公園が月島の家から数分歩いた先にあるので、開いた窓からは、無邪気な笑い声が聞こえてくる。

「ツッキーぃ」

月島のシャツに手を廻す。月島のこの世で最も綺麗な艶やかな背中に傷ひとつつかないように。衣服を山口は掴む。本当はベッドシーツに手を伸ばして遣り過ごすのがベストなのだろうが、正常位だと背中に手を回し、尻をあげ顔と顔がぶつかる密着した距離の方が気持ち良いと月島がいうのだから仕方ない。それに山口も、間近で眉間に皺を寄せ限界寸前の月島を見るのは、なんとも気持ち良かった。

「山口っ」


嗚咽を漏らすように、吐き出された名前。咽が掠れて、荒くなる息。こんな声をきけるのは自分だけなのだと思うと途端に優越感で満たされていく。
収縮を繰り返す襞を意識して締め上げると、肉壁のなかに埋まっている月島の肉棒が大きくなったのを知る。
生意気だと、仕返しの意味を込めて、月島の顔が山口の真上に降り注ぐ。
息を吸う出口を塞ぐように、月島の唇が野獣のように山口の咥内を犯してきた。縦横無尽に舌先が、動く。負けず嫌いで素直になれない月島そのものを描いたような動きだ。
鼻で息をしても足りない。酸素が薄くなり、顔が真っ赤に染め上げられていく。

「ツッキーぃ、はぁっぁん!!」

口を離され名前を呼ぶと、腰を前立腺目掛けて、打ち付けられた。
快楽が根本から電流のように沸き上がってきて、全身が痺れてしまう。
月島の腰が動く。前後に身体をつんざくように翻弄されたかと思うと、前立腺を適格に捉えたあとは、亀頭で抉るように下から持ち上げられる。

「山口はさぁ、淫乱だよねぇ」
「はぁっぁ、そうか、もぁ、ツッキーにだったらっぁ」
「ふーーん、僕にだけ」
「当たり前だよ、っぁ、はぁ、ツッキーぁぁ」

他の男に自分の尻穴を貸すのを妄想するだけで、気持ち悪い。けれど、もし月島が人のセックスを見ながらでしか興奮出来ない人間であるのなら、喜んで月島以外の人間に尻穴を差し出しただろう。
ああ、月島がまともなセックスを好む人で良かったと山口は衣服を握り締める。



「声、ぜんぜん抑えられてないんだけど」
「はぁっぁ、ごめっ」

注意されて、奥歯を噛み締めるように耐えようとしたが、つまらないという眼差しが山口を見つめた。たまにこうして、月島は天の邪鬼なことを言ってきて山口を困らす。

「抑えなよ、とは言ってないよ」
「ぁっはぁ、あ、そ、そうだねっ」
「うん。まぁ、聞こえても僕は知らないけど」
「ツッキーの家っぁ、はぁん、お化け屋敷って言われちゃうよね」

失礼だな、という顔色をして、月島は再び腰の律動をはじめた。
おばさんにはさっきのこと言わないでね、と山口が隙間に口を出すと、黙らすように動きが早くなる。

「ねぇ、山口」
「はぁっぁ、な、なに」

散々、焦らされ、肉壁が月島の肉棒を包み込み粘膜がもうどちらのものか分からなくなってきた。山口は口角の隙間から涎をだらしなく垂らしながら、喘ぐ。
先端からは我慢汁が漏れてきている。反り勃って、腹にあたっているので、月島が律動するたび、上半身にYシャツを着たままの月島の裾についてしまう。
ああ、駄目だ、と山口が朦朧とした意識のなかで思うが、今さらこの行為を止めることなど出来ない。そもそも、正常位でする時はいつも月島のYシャツを汚してしまっている。


「はぁっぁ、山口」
「な、なに、ぁっツッキーぃぁ」
「別にさ、背中に傷つけても怒らないよ」
「ちが、これは、俺のっぁ、問題で」
「あーーはいはい。わかった、わかった。僕のYシャツが毎回汚れるのが嫌だから、いい加減、手を回して背中にすがり付きなよって言えばわかる?」


月島の汗が山口の皮膚に堕ちる。彫刻みたいに美しい月島の顔が山口の前にある。息が近付く。首を傾げられ、理解しただろう? という眼差しを向けられた。
山口は目頭が熱く淀んできたのを感じた。じわり、と涙腺が緩む。
手を今まで一度たりとも傷付けたことのない、月島の背中へと回した。丸く切り揃えられた爪が、月島の肉へと突き刺さる。

「ひっぁっぁ、ツッキーぃ、ツッキーはぁぁ、ツッキーっぁ」
「はは、山口煩い」

煩いといいながらも、月島は機嫌が良さそうに微笑んだ。打ち付けた肉と肉が汗をかりと、スパン、スパァンとぶつかる音がする。
月島の肉棒を加えこんだ山口の襞が限界まで拡がっていき、膨張した月島のものが弾け飛ぶ。


「っーー」
「あぁっぁ、ツッキーのが俺のなかに入ってくるよぉっぁぁ、いぐ、いくっぁぁぁん!!」


月島が果てると同時に山口も射精をした。






親が帰宅する前に起きて、一階の洗面所までとてとてと月島は足を動かした。
桶をだし、山口の精液がついたYシャツを水につける。暫く洗剤と一緒に浸けておかなければ、こびりついた精液は剥がれてくれない。
はぁと溜め息をついていると、背後から制服を着込み腰を痛そうに擦っている山口の姿が鏡に映った。


「ごめん、ツッキー」
「別にいいよ。吐き出させたのは僕だし。ああ、けど今後からはもう着ないからね」

言い放つと山口はへにゃりと目尻をさげた。ただでさえ、小さな双眸は笑うと肉で潰されて消えてしまうのだが、月島はこの不細工な顔が嫌いではなかった。
山口の指先が月島の背中に触れる。行為の最中につけてしまった傷跡を愛しそうに撫でたあとに「痛い?ツッキー」と不安そうに尋ねてきたので「そこまで軟弱じゃないよ」と返しておいた。