西谷と東峰♀ | ナノ
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旭さんが女の子になって一週間経過した。理由は突発性に女性ホルモンが急増して、体のバランスを均等にとるために性転換してしまったらしい。薬を飲んで女性ホルモンバランスを調節している最中で、あと一週間ほどすれば女に戻れるらしい。
はじめて女の旭さんを見たときはスゲェ驚いて、けど話したらこちらの気を逆なでする所とか、物腰が柔らかな所とか、本当に誰よりも優しくて涙もろい所とかは変わらなかった。旭さんだって確かめるまでもなく喋っているだけで判って、困惑する旭さんを落ち着かせながら俺は病院へと足を運ばせた。原因が判るまでは、もし女のままだったら、うちのエースは誰がするんだとか、せっかく取り戻しかけた旭さんの自信がまた喪失しないかって。心配だった。自分がここまで心配になる相手も珍しいけど、なんとか俺がしてみせる! って自分に言い聞かせて、元に戻ることを祈った。ちゃんと医者が「元に戻りますよ」という言葉を吐き出したときは、良かったですね旭さん! と大はしゃぎすると、旭さんは喜んだ笑みを見せた。
それまで、旭さんがこれまで積み上げてきたものとかが壊れてしまうんじゃないかって、心配で、女の旭さんを直視していなかったが、改めて落ち着いた状態で旭さんをみるとすげぇ可愛い。潔子さんとはまた違うタイプの。
清楚なんだけど、可愛い。すげぇ、優しい陽だまりみてぇな雰囲気が喋るだけで出ていて、老け顔と男の時は散々罵られた顔も、どこかセクシーで溜らなかった。俺は思わず生唾を飲み込んで、今まで普通に見てきた旭さんの顔を直視できなくなった。
胸もでかくて、俺、女子の胸とか触ったことがないから、しょうじき触りたいっていう欲望が湧き出てきたから、あんまり見てしまったら欲望に負けて触ってしまうかも知れねぇという気持ちもあった。男の身体だった時の旭さんもスゲェかっこよかった。情けない一面もいっぱい持っていた人だったけど、俺はそんなところも好きで。堅牢な鍛え上げられた筋肉とか、寝起きの時にだけ見れる髪の毛を下ろした姿とか。俺は旭さんが好きだから、どの旭さんみてもエロくて、カッコよくて、本当にこの人のことが好きなんだって一日一回以上思った。
けど、別に俺の眼は節穴じゃないから、俺がカッコイイって思っているものを他の野郎とどれだけ共有できるかなんて、判っていて。旭さんはすげぇカッコイイけど、女からみればそんなにモテないだろうと安心はしていた。
だけど、女の旭さんは違う。男だったら誰でも抱いてみたい、いや、抱かれたいと思うような体つきをしていて。教室に入って普通に授業を受ける旭さんに群がる虫は多かった。この人は鈍感で後ろめたいところがあるから「俺のことが変わっているから見に来ているんだよね」と落ち込んでいた。違う! 野次馬はいるけど旭さん目当てで見に来てる人もいる! と俺は大声で叫んだけど、旭さんは「西谷は考え過ぎだなぁ」と間抜けな顔で笑っただけだった。俺はつい怒ってしまい、旭さん! と声を張り上げたが、鈍感なこの人にはまったく持って届かなかった。
しょうがないので、ちょっとは自覚してもらおうと、毎日通っていた旭さんのクラスへ行くのを一日だけ止めると(ちょうど、その日、日直だったこともあるけど)旭さんは不安がって、その日の夕方、俺の腕の袖をいじらしくつかんできた。

「俺さぁ、なにか悪いこと、した、かなぁ」

と夕日が真っ赤に染まったなかで旭さんは呟いた。下校中の生徒の姿は見えないけど、人前でこの人がこんな事をいうなんて、よっぽど不安だっただろうし、勇気がいることだっただろう。

「なんでですか!」
「今日……」
「今日来なかったのは日直だったのと、昨日言った忠告を理解してもらうためです」
「……ごめん」

で、どうでした! 今日は俺がいなかったから喋り掛けられたでしょう! と尋ねると旭さんはこくんと首肯した。ほらみろ! と俺は思ったが、直後に語られた、色んな男の人から声をかけられ、ボディタッチをされたという話をきき、俺の前でなんで今日、行かなかったんだ! という反省が生まれた。

「旭さん! もう俺以外の人に触らせないで下さいよ!」
「え……なんで?」
「なんでじゃありません!」

なんでわからないんですか! と俺は怒鳴ったけど、眼前に居る旭さんは判らないのだと瞬きを繰り返し、眉を顰めごめんね、という顔をするだけだったので、俺は声を張り上げてつげた。

「嫉妬です!」
「し、嫉妬!!!?」
「俺だけが旭さんに触ってたいです。旭さん可愛くなっちゃったからもててるけど、触らせるのは俺だけにして下さい。他の男に触られると腹立つんで」

わかりましたか? と尋ねると旭さんは顔を真っ赤にしていた。俺は自分が恥ずかしい科白を言った自覚があったので、すみませんと、旭さんを見つめたが、どうしても判って欲しかったのだ。
旭さんは暫くするとゆっくり頷いて「わかった」といった。ああ、もう可愛すぎるんで、俺が独り占めしたいっていう独占欲と戦いながら、はじめて女の身体になった旭さんをぎゅっと抱きしめた。