月島と山口 | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -



月島の指は綺麗だった。滑らかな白磁の陶器みたいで。叩いてしまうと折れてしまいそうなのに、月島はその指でボールを叩いていた。
叩かれても手はぐちゃぐちゃになったりしない。堅牢を維持したまま、人体の形をしっかりと保っている。山口はそんな美しい月島の指を見て、いつか丸のみしたい衝動を必死になって抑えていた。
月島の指先を手にとり、まず爪皮を捲り、綺麗に剥けたのを自慢するように見せる。月島はきっと嫌そうな顔をするだろう。山口はそれに負けず、月島の腕を引っ張って、口元まで手を運ぶ。意外と感じやすい月島は、指を舐められると眉間に皺を寄せて、静止を促す声をかけてくるに違いない。
ツッキー気持ち良い? と尋ねると、月島はきっと山口を馬鹿にする言葉をかけてくるか、無視を決め、読書に耽るかどちらかの行動をとってくる。そうして、油断した時に舌先で包み込むように舐めていた指をがぶりと噛み切ってしまいたい。
別に真っ赤に染まる血が見たいわけではない。山口が思う月島の一番綺麗な所を切り取ってしまいたいのだ。切り取って、人体から分離された指先を標本にしてしまいたい。蝶々の標本なんかより、月島の指先が伸びきった白い女性のような指は美しく、どれだけ絢爛な額縁に入れようと負けないだろう。
けれど、それをしないのは機会を窺っているとかではなく、指がなくなった後の月島が、山口から離れていくと判っているからだ。今までの月島は、文句を言いながらも、けして山口を離さなかった。距離を置こうと月島から山口に言い渡したことは一度もないのだ。あの月島から、そうやって拒絶されていないというのは山口の自慢だった。嬉しいことだった。
しかし、指を食いちぎって所有欲に負けてしまうと、月島は怨嗟のこもった眼差しで自分を見て、きっと、今のような位置を他の誰かに譲り渡してしまう。山口はそれが耐えられないので、美味しそうにぶら下がる指を眺め、ご褒美だと生唾を咀嚼するのだった。