僕たちの一生
僕たちの一生///

▼ゴールデン・アルス・ノヴァ

 陽が昇る。ローマに渦巻いていた暗雲は、太陽が昇るとともに散っていった。きらきらと眩しく、それでいて柔らかな日差しが雲間から降りてゆく。

 怒涛の夜が明け、ディアボロはひとり、唇を噛み締めた。既に引けぬ矜持のもと、ひたすらに策を講じる。自身を頂点たらしめたのは、努力や運だけでなくその頭脳もあってのことだ。次から次へと考えが浮かんでは消えていくというのに、募るのは焦燥ばかりであった。

 いつもであれば。

 そう、いつもであればと彼の思考が鈍く止まる。ちらちらと脳裏によぎる姿に、目の前の光景が一瞬ぶれた。ふるりと小さく首を振る。ここで止まってはいけない。

 彼は、いや、彼女は。自身の栄光を望んだはずだ。
 半ば言い聞かせるようにして、思考を打ち切った。


 降っていた雨が止んでいた。きらきらと、太陽と見まごうばかりの光を見た。それが幻の玉座だったか、こちらを見据える少年であったか。それとも、その手にある矢であったか。

 ぎらりとディアボロの目が鋭さをます。
 娘の言葉で矜持に侮蔑を投げかけられた。ゆらりとその長い髪が揺れる。映しだされる未来に、口角が釣り上がる。

「礼を言うぞ、我が娘よ!」

 じりと一歩引いた足を、前に。ディアボロが飛び込む。
 その先には、太陽の如く輝かしいものがあった。眩しさに一瞬、ディアボロが目を細める。風が煙を晴らす。

 矢が、煌めいた。


mae  tugi
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