夜の女王
27///

くじらさん。くじらさん。

「よんだか、俺の大切な   」

くじらさん。くじらさん。

「よんだかい、僕のかわいい   」


くじらさん。こんばんは。
きょうもきのうもそのまえも。
こんばんは。くじらさん。
でもね、くじらさん。
おこえはきこえるのに、どこにいるの?
くじらさん。くじらさん。
いつになったらくじらさんはわたしのことをだきしめてくれるの。
くじらさんのなまえをね、ずっとずっと さがしてるの。

くじらさん。くじらさん。

「なんだい」

どうしてわたしをおいていってしまったの、くじらさん。
わたしがわるいこだったから?
おほしさまがきらきらしているの。
こんなによるがながいのに。
くじらさんにどうしてあえないの?

「あぁ、それはね、」

くじらさんのことをわすれてしまったから?
だからくじらさんはいつまでもかえってきてくれないの?
くじらさん。

「いつか、いつかお前が……  」




いつかあなたのなまえ、みつけられる?




「あ、おはようノッテ」
「今日もよく寝てたなぁ!なんか飲むか?」
「……めろ…ね… ほるまじお?」

 はっ、と飛び起きたノッテにメローネがにこやかに声をかける。ぼけっとした様子でメローネをみて、それからホルマジオを見た。状況を把握できていないノッテというのは大変めずらしく、メローネとホルマジオは思わず顔を見合わせた。

「ノッテ、平気か?」
「…へい、き…」

 うん、へいき。
 相変わらずどこか抜けた様子でこっくんとノッテは頷く。

「また…また夢をみてたの?」
「……うん」

 夢、だったのだろう。
 ノッテはメローネに問われ、ようやく自分が見ていたものをおもいだした。真っ暗で真っ暗で、何もない場所にぽつんと自分はいた。自分はそこで、そこで… そうだ、たしか誰かに話しかけていた気がする。
 いったい誰に話しかけていたのかと思い出したところで、ほぉおおん、と遠く遠くから汽笛のような声が彼女を呼んだ。あぁ、そうだった。くじらを探していたのだ。

「くじらさんがね」
「うん?」
「…くじらさんが、いたの」

 どことなくさみしげな彼女に、メローネはそっか、と小さく頷いた。

mae  tugi
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