夜の女王
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くじらさん。くじらさん。
「よんだか、俺の大切な 」
くじらさん。くじらさん。
「よんだかい、僕のかわいい 」
くじらさん。こんばんは。
きょうもきのうもそのまえも。
こんばんは。くじらさん。
でもね、くじらさん。
おこえはきこえるのに、どこにいるの?
くじらさん。くじらさん。
いつになったらくじらさんはわたしのことをだきしめてくれるの。
くじらさんのなまえをね、ずっとずっと さがしてるの。
くじらさん。くじらさん。
「なんだい」
どうしてわたしをおいていってしまったの、くじらさん。
わたしがわるいこだったから?
おほしさまがきらきらしているの。
こんなによるがながいのに。
くじらさんにどうしてあえないの?
「あぁ、それはね、」
くじらさんのことをわすれてしまったから?
だからくじらさんはいつまでもかえってきてくれないの?
くじらさん。
「いつか、いつかお前が…… 」
いつかあなたのなまえ、みつけられる?
「あ、おはようノッテ」
「今日もよく寝てたなぁ!なんか飲むか?」
「……めろ…ね… ほるまじお?」
はっ、と飛び起きたノッテにメローネがにこやかに声をかける。ぼけっとした様子でメローネをみて、それからホルマジオを見た。状況を把握できていないノッテというのは大変めずらしく、メローネとホルマジオは思わず顔を見合わせた。
「ノッテ、平気か?」
「…へい、き…」
うん、へいき。
相変わらずどこか抜けた様子でこっくんとノッテは頷く。
「また…また夢をみてたの?」
「……うん」
夢、だったのだろう。
ノッテはメローネに問われ、ようやく自分が見ていたものをおもいだした。真っ暗で真っ暗で、何もない場所にぽつんと自分はいた。自分はそこで、そこで… そうだ、たしか誰かに話しかけていた気がする。
いったい誰に話しかけていたのかと思い出したところで、ほぉおおん、と遠く遠くから汽笛のような声が彼女を呼んだ。あぁ、そうだった。くじらを探していたのだ。
「くじらさんがね」
「うん?」
「…くじらさんが、いたの」
どことなくさみしげな彼女に、メローネはそっか、と小さく頷いた。
mae ◎ tugi