帝王の花冠
笑うアザレア///

 少年は目を覚ます。見慣れた天井は祖母の自宅であった。周りが少しばかり慌ただしいのをよそ目に、彼がのろのろと祖母のいるであろう部屋へと脚を動かす。誰にも合わず、長い廊下を通り抜けて、彼女の部屋へとたどり着いた。

 眠る祖母の手が冷えていた。それを知っていたが、少年はぽろりと涙をこぼす。部屋の入り口が開いていることに気がついた、少年の父がやってきた。彼も母の様子に気が付いて、あぁ、と嘆きをこぼす。
 わんわんと泣き叫ぶ少年は、滲んだ世界の中できらきらと輝く金色を見た。ぴたりと泣くのをやめた少年に、つられるように彼らは目線を向ける。

 黒髪の少女の手をとったその男は、やけに泣きはらしたような赤い目を細めて微笑んだ。少女は彼に手を引かれながら、どこかへ去っていく。
 少年は呟いた。ディオ、と。そして彼も、少女も、振り向くことなく消える。ただ、二人共が、笑っていたのを少年は見た。

 はらり。彼らはまた泣いた。穏やかに笑う祖母の顔に、よかったねと笑いながら。


mae  tugi
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