本日、ゴースト日和。
ひらり、きえたとおいひ。///

「あれ、お出かけ?」

 いってらっしゃーい、とひよりはその背中に手を振る。セーターを羽織った次の瞬間にはドッピオへと姿が変貌しているのだが、彼女はふと気になることがあった。

「あのセーターの下にあるあみあみはどこに消えるんだろう。」

 どこまでも疑問が尽きない人物だ、とひよりはひとり神妙な面持ちで見送った。部屋に取り残され、先ほどまでボスがめくっていた資料を手に取る。どうやら、彼が主導する麻薬密売ルートにちょっかいをかけてくる集団があるらしい。それがどういった集団なのかまでひよりにはわからないが、結構な数の面倒事と被害が引き起こされていることはわかる。パッショーネにとってもボスにとっても障害になっていることには違いがなかった。
 だから、それを排除したくて仕方がないのだ。しかし、敵もバカじゃない。うまく尻尾を隠して逃げ回るから、こちらからも手を出しにくい。現場の一つでも抑えられればあるいは……といったところだろうか。

「……。まぁ、一方的といってもお世話になってるしね。」

 さて、突然ではあるがひよりは先日カメラを拾った。拾ったというのには語弊があるが。放置されて埃まみれで忘れ去られていたものだから、もらっても問題はないだろうとパッショーネのザル管理物品倉庫から拝借したのだ。フラッシュがたかれても、音が響いても、ひよりが触れているあいだはひよりのルールが適用されて誰にも気がつかれない。
 つくづく便利な体だぜ、とひよりはどこかあくどい笑みを浮かべる。このまま、件の男を探して、現場の一つでもおさめてしまおうという魂胆である。

 もはや彼女にとって目の前で起こる有象無象はドラマかなにかにしか思えていない。最初持っていた善悪の認識などどうでもよくなった。だってこれは、手の加えられる遊びに過ぎない。

 誰にも認知されなくなって一ヶ月あまり。誰にも知られず、彼女の心は擦り切れていた。

mae  tugi
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