夜の女王
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「それで?」
リゾットが切り出した。
リビングには九人全員が集まっており、ぐるりといびつな輪を作っていた。円の中央付近に座るメローネを、それより右に座っていたリゾットがちらりと見る。
一歩離れたところで壁に背中を預けているホルマジオ。二人がけのソファで密着して座っているソルベとジェラート。かちこちに硬直して困惑した表情のペッシ。苛立たしさに貧乏ゆすりをしながら頬杖をついているギアッチョ。背もたれに体を預けてタバコを加えているプロシュート。メローネが話し始めるのを足を組んで座りながら待つイルーゾォ。
16の目がメローネを見ていた。
「それで、何を話せばいいわけ?」
にこりと笑みを貼り付けているメローネに、残りの八人はいくらか目配せをしてから視線を戻した。これは厄介かも知れないと思いながら、プロシュートが口火を切った。
「あのガキの素性は。」
「さぁ。」
「お前との関係は。」
「特になし。」
「母体にするつもりかぁ?」
「まさかぁ。」
「知り合いなんだろ?」
「一応ね。」
「敵なのか?」
「中間ってとこかな。」
なんとも曖昧な回答が続き、彼らは一度黙った。
その様子を見ていただけのリゾットとソルベがちらと視線を交わす。次に口を開いたのは、ギアッチョであった。
「あの女、」
「うん?」
「スタンド使いだな。」
緊張。空気が鋭さを増した。なに、とリゾットが小さく漏らし、メローネはにまにまと口元に弧を描いたまま笑っていない瞳をギアッチョに向ける。
「そうだよ。」
メローネが答えた。途端のことである。リビングの扉が開いたのだ。ぎぃ、と不自然に開いた扉に、近くにいたホルマジオが後ずさる。
振り返ったイルーゾォががたがたと音を立てて立ち上がる。メローネを覗いた八人が扉のその向こうに視線をあずけたまま警戒に後ずさった。
扉の先には何もなかった。
見慣れた廊下さえ、そこにはなく。ただ黒がそこには広がっていた。メローネはそれに背を向けたまま、緩やかに這いよる暗がりを背負う。そして、笑った。
mae ◎ tugi