艦これ無糖話///

「提督…いくらなんでも、あれはかわいそうですよ」
「仕方ないだろう。それに、ほかのやつらが甘いんだ。」

三歩後ろを歩く鳳翔の表情は見えない。
だが、間違いなく困ったような呆れたような表情を浮かべていることだろう。
すぐについた提督室の扉を開ける。
鳳翔が「…そうですかね?」などと苦笑しながら扉を閉めた。
最近はそんな顔ばかりだな、と言えば誰のせいでしょうか、とこれはまた手厳しいことだ。



休息室で電が何かをしているところに遭遇した。
こちらに気がつくこともなく、机に向かって何かをしている。
「できたのですっ」
ぱっとそれを両手で掲げると同時に、ぱちりと目が合う。
掛け軸かなにかに見えなくもないが、裏側からでは何が書いてあるのかわからない。
「て、ててて、提督!?」
「……提督だが」
あわあわと慌てだした電を見ていれば、いつの間にか来ていた鳳翔が背後から休息室を覗き込んだ。
「あら、できたんですか?」
「鳳翔さん!は、はい!できたのですっ」
鳳翔の登場であからさまにほっとした顔をした電はそれを手にしてこちらへと寄ってくる。
ちらちらと何度か私の顔を見て、それからそれを手渡してきたのだ。
「……電」
「は、はいっ」
「…こんなことをする暇があるなら、訓練の一つでもしなさい。」
「提督!」
ちらりと手渡されたものを確認して、鳳翔へと持たせ、休息室をあとにする。
鳳翔が咎めるように叫んだものの、そんなのも無視して、足早に。
それが少し前のことだ。




「素直に褒めて上げればよろしいのに」
「…ふん。誰が言うか」
あのあと、電が泣きそうで大変だったんだと文句を言う鳳翔。
どうにか”泣きそうだった”で済ませて来たのだろう。非難めいた目でこちらを睨むものの、本当に優秀な秘書だ。
「提督も子供じゃないんですから…もう。ここに飾っておきますよ」
「…好きにしろ」
電が書いたそれを鳳翔が壁にかける。
「提督室も華やかになりましたね」
「誰のせいだ誰の」
「あらあら、私のせいですか?」
「ぐ……鳳翔、」
「はい、わかってますよ」
「……」

(後日、電の元に特別配給があったことをここに記す。)


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壁に踊る【!すでのな】の文字。
鳳翔お母さんには頭が上がらない。

mae  tugi
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