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学校に行く理由は勉強をする為。両親の居ない私にとって学費は相当の負担がある。そんな私が高校生になれたのは、耀兄さんのお陰だ。耀兄さんは私の為に毎日夜遅くまで働いてくれている。幾分かは免除を受けてはいるし、そういうことが重なって、しっかりと勉強を受けなければならないと兄さんの努力や優遇に報えない。だから、学校とは勉強をして偉くなって、社会に出てお世話になった方々に恩返しをする為なのだ。

…仲間や友達と、群れる為じゃない。










本田菊という生徒はどこか他の子達とは違っていた。
纏う雰囲気も、反応も、日々の生き方に対する姿勢も、全てにおいて落ち着いて冷静に周りを見ながらも─他の生徒を子供っぽいと冷めた目で見ているときもあり─己の思った通りに行動する。成績は優秀で勉強に対して努力は惜しまない。元々の性格が真面目なのもあるが、両親が居ないというのも相俟って一層他との壁を作っているように見えた。一言で言ってしまえば…浮いている。

浮いている生徒の成績が良ければ良いほど、勉強が苦手な者の反感も加えてそれが悪い方向へと繋がるケースが多々ある。彼は今年で三年生だが、今まで俺が彼を授業で受け持つことはなかったので噂でしか彼の存在は聞いたことがなかった。まぁ、噂って言っても先生間の噂で、本田は成績優秀で態度も良くて非の打ち所がない、とかいう大人目線。だから、知らなかったのだ。彼がどのような学生生活を送っているのか…彼のクラス担任になるまでは。










新学年、つまりクラス替えとやらが行われるので、生徒達のテンションは異様に高い。仲の良い子と離れたと嘆く者もいれば、好きな子と一緒になれて喜ぶ者もいる。そんな空気に満ちた廊下を歩きながら目当ての教室を見つけると、ガヤガヤとした教室の扉を開けた。


「はいはーい。みんな落ち着いて座ろうね〜」
「げっ、フランシスが担任かよー!」
「はいそこ文句言わないの。こんな素敵なお兄さんが担任なんて嬉しいでしょ?」
「自分で言うなよなー」


二年生の時から知っている男子生徒が叫びを上げる。嫌がるようなことを言ってはいるがその顔は笑顔だ。自分で言うのはなんだが、生徒達に好かれる性格をしているのでこう言うときに嫌な顔をする子は滅多にいない。それにバレンタインとかにはわざわざチョコくれる子もいるし(本当は没収しなきゃダメなんだけどね)男女問わずにフレンドリーだ。
担任を受け持つのは実は初めてなのだが、なんとかやって行けそうだなと思い頬を緩めると、後ろの方の席で誰とも喋らずに大人しく座っている生徒を見つけた。多分、目が合っている筈なんだけど、どこか違和感。教卓に名簿を広げてクラスのメンバーを確かめる振りをしながら彼の席と名前を一致させる。そして納得した。


(──あぁ…あの子が、噂の…)


如何にも真面目で不思議な生徒、それが第一印象だった。












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