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玉座の間から出て、廊下を歩く。
今日の予定はローニカが全て断ったため、何もない。
絨毯が敷かれた床を踏みながら歩いていると、レハト様、と後ろから声が掛かった。
「なあに、ローニカ」
「レハト様」
立ち止まり振り返るとと、ローニカは私のすぐ傍まで近付いてきて、また名前を呼ぶ。
目線でその先を促しながら首を傾げると、相変わらずの穏やかな笑みのまま口を開いた。
「これからはもう少し、信用する人間はお選びになって下さい」
「……、はあい」
耳が痛い言葉に思わず顔を顰める。
返事を返すと、ローニカはその背をかがめた。
「もしも、此度のようなことがまた起きた時は、このローニカ」
低い声が、耳元でつぶやく。
「『何を』してしまうか、わかりませんので」
元の位置に戻った顔を見上げると、その表情はいつもと変わらないもので。
しかしその瞳だけは、ゆらゆらと昏い炎を灯していた。
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