■彼方の彼


ポストを覗いては溜め息をつく日々が続く。



(来ないなぁ…)



わかっていても、期待しないで待つことは難しいと思う。



(会いたいよ、本田。)




いつか、この寂しさにも慣れてしまう日が来るんだろうか。




「なあこれ、姉貴宛てに届いてたんだけど。」



不思議そうな顔をする大河が渡してきたものは一枚の絵葉書だった。
それには書き忘れてしまったのか、差出人の名前がない。
だけど、あたしにはもちろんわかった。





“ 清水、元気か? ”




それは待ち望んでいた、彼方の彼から自分へのたった一言だけのメッセージ。
あまりにも真っ青で眩しい写真はいつかどこかで見たような景色で、誰かの隣で一緒に感じた空の色に似ていると思った。




「…ふふ。相変わらず、汚い字…」







思わず呟いた言葉とは裏腹に、あたしはそれを大事な宝物のように抱きしめた。





超筆不精が彼女にエアメールを出したようです。


清水薫で6題「彼方の彼」【配布元・NO GAME】


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