●さわって・変わって


「おかえり、本田っ!」

アメリカからの帰国を薫の笑顔が真っ先に出迎える。
それに対する吾郎の第一声はこうだった。


「………髪。」
「え、髪?」
「伸びたな…、お前。」
「あ、うん。久々に伸ばしてみようかなーって思ってさ。」
「へー…」

久しぶりに直に会うくすぐったいような気恥ずかしさ。そして少しだけ大人びたような外見の眩しさに吾郎は一瞬次の言葉を失っていた。薫は明るく屈託のない声で尋ねる。

「ね、どう?似合う?あんまり可愛くて、惚れ直した?」
「…ちゃんと女に見えるぜ。良かったな、清水。」

相変わらずの素っ気ない感想に薫は、ハアとため息と不満をもらす。

「お前な、少しは彼女を褒めることくらいできねーのかよ。似合ってるとか、綺麗だとか…」
「あー、はいはい。beautiful、beautiful」
「英語でテキトーに言うなっ。」
「ったく、メンドクセーな。お前、注文多すぎ。」
「あっコラ、せっかくセットしてきた頭、ぐしゃぐしゃにすんなーっ!」


子供のようにじゃれあうふたり。
離ればなれだった距離をこえて、再び同じ時間が動き始めるのだった。





薫嬢の髪伸びた姿が見たいことと、本誌展開的に吾郎に何らかの連絡とって欲しい願望があいまって生まれた妄想。

他の女の子には「可愛い」とか「美人」とかけっこう言えるみたいだけど(涼子ちゃんとか美穂ちゃんとか静香さんとか)、何故か彼女にだけは絶ーっ対に言えない吾郎がツボです。




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