●君ノ声


この日の彼女には大きな野望があった。

「…あのさ…」
「どうした、清水。」
「…ご…」
「ん?」
「…ご飯、食べた?」
「ああ、食ったけど。」
「いや、そうじゃなくて!…ご…っ…」
「ご?」
「…午後…の、予定はどうする?」
「そうだな、バッティングセンターでも行くか。」
「…ご、ごろ…」
「は?」
「…ゴロゴロ…しちゃって練習怠け気味だったから、良いかもな、それもっ!アハハハハ!」
「…何だ、お前…?さっきから変じゃねーか?」
「べべっ…別にっ!何でもねーよ、本田っ!」

何故か赤い顔で頭を振る彼女を見ながら“女はわからねえ…”と言いたげに首を傾げる吾郎だった。


(…呼べない……やっぱり、名前でなんて恥ずかしくて呼べない…!)


彼女の密かな野望が叶うのは、まだまだ先のことのようであった。






チャレンジはしてみたものの、玉砕する薫嬢を書いてみました。大河か友達にそそのかされたのかもしれませんね(笑)

幼馴染みで彼氏彼女なわりに、お互いを苗字で呼びあう吾薫がツボです。この人達は結婚するまで下の名前を照れずに呼べないに、一票を投じたいと思います。



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