●パンと蜜をめしあがれ


病院の小さな個室。
花瓶にお見舞いの品を飾る薫に、ベッドの方から吾郎の声が聞こえた。

「男に花束かよー。どうせなら食えるもんの方が…」
「コラ、文句言うな。そもそもお見舞いなんて、あたしの笑顔があれば充分だろ?」
「可哀想に…。お前んちには鏡がねーみてーだなぁ。」
「あー、そう。そういうこと言うんなら美味しいケーキ買ってきたけど、あげるのやーめた!」
「えっ?ウソウソ、いやー、清水さん!今日は素晴らしく素敵なご様子で…とてつもなく男前ですねー。」
「お前な、それ全然誉めてねーだろ。…まぁいいや。元気そうだな、本田。」

怪我で入院をしてもいつもと変わらない幼馴染みの様子に安心し、憎まれ口であっても自然と笑みが溢れた。

「ケーキすぐ食べるよな?ここって、フォークとかお皿ない?」
「んー、オフクロがどっかに置いてった気が…いーや、めんどくせー。お前が直接食わせてくれよ。」
「…えっ?」

目の前には餌付けを待つように、そのままあんぐりと口を開ける吾郎がいた。

(…こ、これは…)

その意図することを知った薫はケーキの苺のように赤くなっていたのだった。





原作37巻・入院中の隙間妄想。
花より団子な吾郎のお見舞いにケーキを持ってきた薫はさすがは幼馴染みだと思います。

聖秀編にしては甘すぎな気がしますが“この後にきっと吾郎も、恥ずかしい事を言ってしまったと気付くんだろう”と言うありがたいお言葉を拍手コメントで頂きましたので、そのように私も想像します!そして照れればいい!





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