■BIRTHDAY


「これやるよ、清水。」

不意打ちに吾郎の手元からポンと投げ渡された小さな箱。さすがにソフト部と言うべきか薫はとっさに上手くキャッチした。




「…これは…」

控えめな可愛いリボンがついているそれをしげしげと眺めていると贈り主は口を開いた。

「まあ、なんとか俺もメジャーに復活したし、お前も誕生日だしな、今までのお礼代わりっつーか、お祝いっつーか…」

吾郎はそう言って照れ臭そうに鼻の頭をかいていたが、目の前の薫の様子に突然目を丸くする。見れば薫はみるみる瞳を潤ませながら、今にも大粒の涙をこぼしそうにしていた。

「なっ、何泣いてんだよっ!」
「…な、泣いてないっ……こ、これは…そう、汗!汗だから…っ」

自分でも涙に驚いたようで、顔を隠すように薫は瞳をゴシゴシとこすりだす。その手をつかんで吾郎は顔をこちらを向かせた。

「アホか。何言ってんだよ、お前。」
「…う、…だって…」
「まさか、泣くほど気に入らねえってのか?」
「バカッ。そんなわけないじゃん!」

相変わらずの見当違いな吾郎の鈍感さに、薫は慌てて訂正する。

「……逆だよ。何だか今、しみじみ実感しちゃって……」
「何を?」
「『本田が元気になったんだなあ』って。もちろんプレゼントもだけど、それがやっぱり一番嬉しいから……アハハ、そしたら目から勝手に」

“らしくないよな”と少し赤くなりながらも素直に自分の気持ちを口にする薫。それに応えるように吾郎も今までずっと胸につかえて言えなかった一言をもらす。

「……お前にも心配かけたよな。わりぃ。」
「ううん、本田こそ…本当にお疲れ様。」

薫は今度こそ満面の笑顔を浮かべる。吾郎も何より自分が望んでいた彼女の表情に安心し、同じように笑みを返す。

「ただいま。」

「おかえり。」

そしてそのまま自然と寄り添い触れ合う指先と唇。離れていた時間の隙間をゆるやかにその温もりが埋めていった。






どんなプレゼントよりも、薫嬢は元気な吾郎の顔を近くで見れることが一番嬉しいんだろうな〜と思った誕生日記念SS。

末永くお幸せに!



















「ありがとう本田。プレゼント、開けるよ?」
「おお。たいしたモンじゃねえけどな。」
「…わ…キレーなネックレス…。つけてみていい?」
「ちょっと待った。」
「へ?」
「実は、あとひとつ渡すもんあんだよ。せっかくだし、それと一緒に…」
「え、渡すもんて…」
「これだよ。」

ジャーン、と言わんばかりにウキウキと楽しそうな彼氏から差し出された品。それを手にした瞬間、彼女は呆れた声を出すのだった。

「……なんで、12月に水着なんだよ……」






●あとがき・その2●
そして、70巻の表紙イラストへと続く…(笑)

あのイラストからは『本田、似合うかな?』ってな台詞が聞こえてくるのでついつい浮かんだネタでした。水着姿は彼氏のリクエストってことで!

………蛇足、大変失礼致しました。




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