暖かい日差しにふと目を開けば時計は上を差していてお昼だという事を寝ぼけた頭が理解する。 ずっしりとした重量感を腕に覚えて横を見れば綺麗な黄色がキラキラ陽の光を反射していて眩しかった。 そうだ、涼太の部屋で寝ちゃったんだ。 普通の女の子ならきっと発狂モノの黄瀬涼太の寝顔、しかも至近距離の、こんなの見れるのは私くらいだ。 昔から一緒にいて兄弟のように育って、お互いに無防備で親愛はあってもそれ以上のない関係。 正直、好きか嫌いかの二択なら好きだ。 涼太は人懐っこいし嫌がることは絶対しないから可愛い弟みたいな感じで好き。 涼太はそう言うと譲らず自分が兄だと主張するがそう言うムキになるとこが子供っぽくて弟みたいなんだって。 相変わらず惰眠を貪る黄色い大型犬のすり寄るような体制に私の腕が悲鳴をあげはじめたのでユサユサと体を揺すってやる。 涼太はかすれた声で唸ってから目を開けた。 未だに少し眠そうな目をグリグリ擦った涼太が私の真っ赤な腕を見て「重かったッスね、ゴメン」と言った。 「さちこと居るとついゆっくりしちゃうんッスよねぇ」 「まぁ、家族みたいなもんだしね」 「さちこ暖かいから」 多分、体温の話だろう。 私はどうやら熱を発しやすい体質らしく体全体が湯たんぽのような人間だ。 涼太は体温低めだから側にいると暖かくて眠たくなるのだろうか私が仮眠を取るとすり寄ってきて一緒になって寝てしまう。 私は私でそれが昔からの習慣で熟睡してしまう訳だから仮眠がマジ寝になるのだ。 そして今日も昼まで寝てしまった。 「ひさしぶりに休みだからまったりしたいッス」 「してるじゃん」 「さちこともっかい一眠りするッス」 「巻き込むなっ」 涼太が体重をかけてきてせっかく体を起こしたのに倒されてしまう。 胸の辺りに涼太の顔があってもぞもぞするからくすぐったい。 「涼太、そこおっぱい」 「これはまな板って言うんッスって痛い痛い!!」 貧乳で悪かったな、そう思って頭を拳でグリグリしてやれば涼太は体を起こして体を私に覆いかぶせて抱きついた。 「さちこあったかーい」 「ねーるーなー」 「拒否権無しッス!」 「もっかいグリグリしたろーか」 私の顔の横にある涼太の頭を手のひらでグイグイ押したら顔だけ上げた涼太と目があった。 綺麗な顔。 まつげが長くて、鼻筋通ってて、薄い唇に整った輪郭。 なる程、これがイケメンか。 「ねぇ…ドキドキする?」 「は?」 「まじまじ見てるけど、これかなり美味しい状況」 「自分でいうなよ残念な奴」 涼太が渾身の表情を決めるが私にはドヤってるようにしか見えないし、私がドキドキしたとして涼太は何を思うのだ。 「つまんないッスねーでもそう言うとこが好きッス」 「はいはい、って絆されるかアホ!」 ゴロンと体を捻って涼太のホールドから逃れ、昨日入れなかったシャワーを浴びに行く。 そうだ流してしまおう、体の汚れと一緒にこの「ドキドキした」なんていう不必要な感情を。 そうしなければ保てないから。 好きも嫌いも嘘も真も全て一緒に育ってきた私たちだから。 流してしまおう、愛も欲望も。 |