「そこ!集中きらしてんじゃねぇ!!」 「ちょぉーっと笠松先輩いいッスか?」 「どうした黄瀬」 最近、笠松先輩が部活の練習を見に来てくれるようになったのはいいッスけどなんかこないだの日曜日の休日練習以来凄く気合いが入っている。 というのも当初では指導するのみで試合形式練習は参加せずコーチングするだけだったのが今はポイントガードとして試合に入り試合の組立て方なんかも指導し始めた。 当然試合になれば熱くなる人だしシバき具合が数段増すわけで、俺を含めた一年はそれはもう痛い。 自主練の最中、シュートをミスしまくる一年に叱咤を飛ばした笠松先輩に声をかける、笠松先輩のバスケットに対する思いは分かっているけど、一体いきなりどうしたもんかと、しかも自主練の日にまで。 「あのー何かあったんッスか?」 「何って何だ」 「へ?それは俺が知りたいッスよぉ」 笠松先輩はキョトンと俺を見た、本当にわからないという顔をして。 仕方ないから少し考えてみる、変わった日の前後の事を。 すると横の笠松先輩が何やらケータイを開いてカチカチ何か打ったかと思うとすぐそれを閉じた。 「メール……」 「あぁ」 ふとメールで思い出したけど笠松先輩が変わる日の一週間前さちっちがメール打てないとか面白いことしてたっけなぁ、んでその後笠松先輩に電話して、そしたら笠松先輩が動揺したって思い出したら面白くなって……あ。 「さちっちか!!!」 「っ!んだよ吃驚させんな黄瀬ぇ!」 「いってぇ!肩パンやめてっ」 笠松先輩が明らかに動揺を見せたしこれはやっぱりさちっち関係ッスね。 しかしバスケの指導が厳しくなったとするとまさか良くない展開に…まさか。 「フられたっ」 「バカなこと言ってねぇでバスケしろ!!」 「いってぇ!」 二度目の肩パン、だけど笠松先輩の顔は真っ赤。 何やら肩をびくつかせて再びケータイを開いた先輩がポツリと俺に。 「逆だよ…逆、言わせんなバカ」 「お…おめでとうッス」 「バスケしてねぇと落ち着かなくってな」 「なる程ッス、でももう少し手加減して欲しいッス!」 「わり……」 そう言えば笠松先輩はあまり幸せそうな顔はしてなくて可笑しいなって疑問符が浮かぶ、それが顔に出てたのか笠松先輩は頭をガシガシすると「こーいうのはお前が一番聞きやすそうだな」なーんて言って口を開いた。 「さちこ……あ、さちさんだけど」 「いいッスよ俺も本名知ってるんで」 というか名前呼びまで進展したんッスか…… 「仕事忙しくなるって言っててよ、別に会いたいとかそう言うのは我慢出来るんだが、毎日メールくれるのが申し訳なくってな、邪魔んなってねーかなって…なにニヤついてんだっ」 「ってぇ!!すみませんッス!!」 本日三度目の肩パンもらって謝れば笠松先輩はなにか不服そうにブツブツ言っていたけど、笠松先輩の悩みが可愛かったからニヤついたなんて口が裂けても言えない。 「さちっちがメール毎日してるのは覚え立ての機械を弄りだいからってだけだと思うッスけど、深く考えない方がいいッスよ」 「子供かよっ」 「後は笠松先輩と少しでもそうやってコミュニケーション取りたいからッスかね」 「っ……」 笠松先輩の顔が真っ赤になる、大体さちっちが笠松先輩のことを好きだからそうやって時間を割いてメールしてるわけで迷惑ならしないってのに。 「笠松先輩ってお子様ッスね」 「おい、歯ァ食いしばれ?お前のその大切な顔に腫れ物つくってやんよ」 青筋たてた笠松先輩が拳を握ったのでそそくさとコートに戻って、そんな俺を笠松先輩は顰めっ面で見ていた。 仕方ないッスねぇ可愛い弟分が最後のお節介してやるッスよー! 俺はさちっちに連絡を取るべく自主練後スマホのメール作成ボタンを押すのだった。 |