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Underground Justice4
「つまりは兄貴がここにいるから来たわけで、兄貴が知り合いだからここのメンツと面識があったってことか」
「火神にしてはよく理解してるじゃない」
「よし、一発デコピンさせろ」

皆は長机に仕舞われていた椅子を引いてそれぞれの席に座り、新入生の黒子、火神、さちこは小金井により空いた席に促され座った。
お使いに出掛けている土田を待つ間のしばしの談笑、火神はさちことの会話を楽しんでいた。

「それにしてもお前影薄いなーなんで?」
「えっと…」
「その質問めっちゃ失礼だしなんで?って聞き方も訳わかんねーしお前何なの!?」

好奇心旺盛な性格なのか小金井は幼稚園児張りにド直球な質問をし始めた、イキナリの質問、しかも内容が事なだけに詰まる黒子に助け舟を出したのは距離こそ離れているが正面に座った日向だった、困った黒子の顔が見えたのだろう。

「見た目は薄いけど眼光のお陰で目立つよ黒子君は、だから大丈夫」
「眼光?」

黒子の隣りにいるさちこが逆側の隣席にいた火神との会話をいつの間にか切り上げておりそう言った。
黒子は目立つなどと言われたこともなくそもそも目立たないからこその役割が中学の頃にはあった。

「今日はよく目立ってたよ、最初クラスに入ってきたときは驚いたけど…だって昨日の委員会決めの時は確かに薄かった黒子君の認識が強くなったからね」
「え…っとなんででしょう?」
「ふむふむ…なる程」

思い思いの会話をしていたはずの他のメンバーも興味深く黒子とさちこの話を聞いておりリコは何か納得したように頷いた。

「私はね人の体を見れば大体どういうスペックの持ち主なのか解るんだけど黒子君からは私たちと同じ用なモノを感じるのに身体が追い付いてない気がしたのよね」
「ひょろそうだしな」

リコの言葉に日向が返す。
黒子自身は自分が特殊なタイプの人間だと言うことは知っている。

「オーラ、が正しいかもしれないわね眼光という目の奥の確かな正義がオーラとして伝わってくる…小金井君、殺気を肌で感じるのと同じ様な理屈よ」
「さっぱりだ」
「だめだこりゃ」
「まぁわかってても難しいんじゃないか?殺気は刺さるけど黒子のそれは刺さらないだろうし」

匙を投げ出した小金井をフォローするように伊月は笑った。
黒子はここでさちこに対する違和感の正体が分かった、彼女は自分を認識して話しかけてくる人間の一人でしかもそれがピンポイントで自分の視線に起因しているのだと。
まさか自分の方が視線を読まれているとは。

「ただいまー」
「土田ーおかえりー」
「待ってたわよ!んで…持ってきてくれた?」

持ってきたモノであろうそれを土田はひょいっと生徒会室に入れた、それは今朝の暴力事件の男だった。

「え?」
「あぁっ!」

扉から一番近い位置にいる黒子と火神は驚きの声をあげた。
誰が予想できるだろうか、お使いがまさか人間を連れてくることだとは、しかもあろう事かリコは「持ってきて」と物扱い、人の良さそうな土田すら襟首掴んで事の男をぞんざいに扱う。
黒子は認識を改めた、やはりこの人たちは歴としたヤンキーだ、容赦しなくていい相手には容赦しない。

「金髪君、いいのよいいのよ…ぶつかり合いたいなら結構だわだけど正義もなく弱いものいじめは感心しないわ」
「怒りにまかせて学校の備品を割っちゃうのもいけねーな」
「それとその制服、改造してるよねーイケナイなぁ…折ったり着崩すのは良いけど…それ完全に裁断してるよねぇ」
「みんな怖いよー金髪君びびっちゃってるじゃーん…あれれ?今朝の威勢はどこ行ったのかなぁ?」
「…………」

二年の先輩達は皆、不気味なほど笑顔だった、水戸部の無言の笑顔すら怖い。
それに金髪の男は完全に震え上がり砕けた腰が戻らずわなわなしている。
すると伊月が立ち上がりそっと金髪の男の耳元で囁く低く嫌に優しい声で言った。

「……制服を征服したかったわけかな…キタコレ」
「ひぃぃやあぁああああああ」

金髪の男は一目散に逃げて行った。

「伊月」
「まじ伊月」
「伊月君…」
「え?なに?」
「アイツ、なにが怖くて悲鳴上げて逃げたんだ?」

火神は明らかに呆れた顔でそう言った。
そして黒子は確かな手応えを感じていた、これならこの人達とならキセキの世代の皆をまた元の皆に戻せるかも知れない…と。



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