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Underground Justice 2
帝光中学校
中学生ヤンキーでも志し強く正義を貫く、超強豪校

その歴史の中でも特に最強と呼ばれ無敗を誇った十年に一人の天才が五人同時にいた世代は「キセキの世代」と言われている

が、キセキの世代には奇妙な噂があった。

誰も知らない、記録もない
にも関わらず天才五人が一目置いていた男がもう一人
幻の六人目がいたと…




ヤンキーとは常に己の正義を貫く者であれ。
そしてその正義とは誰もが認める物でなくてはならない、何故なら非道な行いは正義と言わないからだ。

しかしヤンキーが認められてから数十年その正義の道から外れる物が増えた、理由は閉塞感と不条理からくる逃避。
立ち向かう勇気と希望を失ったただの不良だ。

そして彼等「キセキの世代」までもがその道を外れた、無敗の強さを誇り誰も手がつけられなくなり彼等は独自の正義を作りそして世界を変えると。
自分の思い描く世界の主君になると。
しかしその「キセキの世代」の理想に疑念を抱く人物が居た。

黒子テツヤ…幻の六人目だ。




黒子が自分の教室の扉を開けば目の前に賑わう教室、既に数グループが出来ており思い思いに会話が弾んでいる、そんな教室にポツンと空間が二つ。
影が薄く誰からも気付かれないそういう性質を持つ黒子テツヤ、そして前日その黒子の前で大立ち回りをして見せたさちこと名乗る学級委員長この二名の周りは静かだった。

本日も引き続きオリエンテーション、授業はなく確か部活動紹介があるんだっけと前の黒板に書かれている本日の予定を黒子は見ようと顔をあげた。
午前中は視聴覚室で交通安全教室やら学校施設紹介やらが書かれており午後からが部活動紹介、今日から部活動の仮入部期間の開始だ。
黒子は部活には入るつもりであった、中学時代はヤンキーグループに所属していた為に部活はしていなかったがこの誠凜は去年からの新設校で恐らく派閥がない、つまりヤンキーグループが確立されてない。
黒子は帝光中学での一件からヤンキーを辞めようと思っていたのだ。

しかし…ここには昨日の少女さちこが入学している、彼女ならキセキの世代を何とか出来るかもしれない。

「黒子君」
「え…あ…何でしょう…!!」

黒子はあまりの衝撃に立ち上がった、いきなり声をかけられたのも、影の薄い自分を覚えていたことにも、そして話しかけてきたのがさちこだったことにも驚いてオーバーリアクションをとってしまった。

「あら、ごめんなさいそんなに驚くなんて思わなくて」
「い…いえ、ぼーっとしていましたすみみません…」
「昨日から日直日誌があったのだけれどまだ当番が決まっていないから昨日は私がやったから今日は副委員長の黒子君にも手伝って貰おうかなって思って」
「あ…はい構いません」

昨日の委員決めの時、それぞれの役職がクラスの人数分の定員があったにも関わらず副委員長が決まらず最後に残り誰がまだ決まってないか騒ぎになった、結局いつも通り忘れ去られていた黒子が残った一人だとわかって仕事があてがわれたのを黒子は思い出した。

読書に集中し過ぎるのもよくないと改めて思った、黒子は案外その辺のんびり屋なのだろう。

「わかりました日誌かいておきます」
「ありがとう」
「あの…聞きたいことがあるんですが」
「なにかな」

さちこの方は恐らく日誌の書き方についての質問か何かだと思っていたのだろう優しくニッコリ笑って黒子を見やった。
しかし黒子の質問は言うまでもなく昨日のことだ黒子はさちこの目をしっかりと見て言った。

「昨日の工場町…閃光の更格驢と呼ばれていましたアナタは…何者ですか?」

さちこは驚きで目を見開いたがすぐに瞼を落とし落ち着きを見せた。

「見られてたんだぁ…殺気ならすぐわかるけど黒子君はそう言うの無理そうだもんね気づかないわけだ…」
「アナタはここでグループを作るんですか?」
「え?グループ?」

さちこは何を言ってるかわからないという顔をした、まさかヤンキーグループを知らないとは言うまい。
黒子はもう一度詳しく問うた。

「アナタは誠凜高校でまだ無いヤンキーグループを作ろうとしているのですか?」

それならば自分も入れてくださいと言うために。
しかしその質問の答えは意外なところから遮られた。

「黒子君は知らないのね誠凜にはー」

ガラスの割れる音。
外から聞こえた大きな音、それに続いて怒鳴り声が聞こえた。

「肩をぶつけといて謝らねぇなんて非常識だろうがあぁん?」

慌てて黒子が窓から顔を出して確認する。
金髪のヤンキーが大人しそうな生徒に絡んでいた、誰が見ても一方的な言いがかりだお互いの不注意だろうに。
黒子は慌てて教室を出て行った。

「黒子君どうするつもり?」
「止めます」
「どうやって?」
「……わかりません、でも見てられないです自分より弱い相手に手を出すなんて正義じゃないです…」
「…へぇーやっぱり類は友を呼ぶんだね」
「え?」

そうこう会話しながら現場へたどり着くと既にギャラリーが出来ていた。
輪の中を何とか進み見える所まで黒子とさちこは出てきた。

「とめます…」
「まって…大丈夫みたい」

さちこは黒子に静止をかけて輪の反対をみてニヤリと笑った。
黒子もその視線を辿る。

身長が高く赤黒い髪をした少し目つきの悪い男が輪の中心にいる喧嘩を売っている男目掛けて歩いていたのだ。
黒子は固唾を飲んで見守る。

「なんだお前」
「そりゃこっちの台詞だよ、てめぇ何してんだ」
「何ってこいつが俺の肩にぶつかってきたから謝らせようとしてんだよ」
「なんで謝らせんのに殴る必要あんだよ」

そう、もう一人の男の方は頬が赤くはれていたのだ。
一方的に殴られたのだ。

「すぐ謝んねぇからだよ」
「マジで萎えるわ…こっち来てから正義もなんも有ったもんじゃねぇよなぁ…お前さ、自分の学校の同胞にまで手ぇあげんのかよ」

赤黒い髪の男が襟を掴み上げると男の口から息をのむ音がした。
それにさらに睨みを聞かせる赤黒い髪の男。

「はーいはいストーップ」
「んだよ…ってさちこ!?お前もここ通ってるのかよ」
「火神あんま強く捻ってるとそいつの意識飛ぶ」
「あぁ?あーわりぃ」

ぱっと火神と呼ばれた赤黒い髪の男は掴んでいた手を離しいきなりで着地を失敗した男はどさりと尻餅をついた。

「ってかアンタさ…まさか新設校だからってヤンキーグループないと思って勝手なことしてる?」
「まじかよ、だとしたら馬鹿じゃねーの」
「あるわよ、誠凜にもグループ…それもこの辺じゃ負けなしの強者が揃ってる」
「睨まれたくなけりゃ一般人してろってーの」

金髪のヤンキーも流石に驚きを隠せないのか開いた口が塞がらずその場でぼーっとしていた。
勿論外野にいた黒子もだったこの誠凜にはないと思っていたグループ、普通グループを作るには何年も何人ものヤンキーがぶつかり合いそして結束し確立するもの、それがまだ一年と数日の歴史もない新設校で…

つまり余程の人間がここの頭を勤めているのだ。


「あの…さちこさん」
「あぁーごめんね黒子君…」
「なんだそいつ」
「黒子テツヤですさちこさんと同じクラスです」
「火神、この子こう見えても骨のある奴みたいよ」
「え?」

さちこの言葉に黒子は素っ頓狂な声をあげたまさか何時さちこにそうまで言わしめる事をしただろうか…

「火神もだけど黒子君も勿論放課後くるわよね…生徒会室」
「生徒会室…?」
「そこが誠凜のたまり場よ」

黒子は小さく頷いた。



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