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Underground Justice 1
薄暗い帰り道、家までの近道にと表通りを外れて静かな工場町を選んだのが間違いだった、と目の前の光景を見てため息を付いた少年は黒子テツヤという。

今日は入学式が終わり、オリエンテーションの日であった、委員会や係り決めの時間をただ本を読みふけって過ごし、そのままの流れで下校時刻まで学校で過ごし少し慌てたように学校を出たのも良くなかったと黒子は頭を痛めた。

この街にはヤンキーが多い、男女関係なくかなりの人数が居る。
彼らにはグループがあり、基本は学校ごとにグループがあったりする。
そのどこかの学校のグループなのだろう男たちがその男たちとは違う制服を着た男、明らかにその手の人ではない一人を囲んでなにやらもめているところだった。

まさに修羅場に黒子は出くわしてしまった。

工場町のある廃工場のフェンスの向こう、辺りは薄暗かったのと黒子自身の影の薄さで中にいるヤンキー集団は黒子の存在に気づいていなかった。
そして黒子の位置からでも聞こえるほどの金属音が高らかにカランとなった。
金属バットがコンクリートの地面に叩きつけられた音。
それを合図に一斉にヤンキーグループが一般人生徒を殴り始めた。
黒子の目が見開かれた、目の前で起きる事柄にビビっていたのではない、あれではまるで集団リンチではないか無抵抗の人間に武器を使う非道な行為に黒子は憤り目を見開いたのだ。


次の瞬間に黒子はフェンスを潜っていた、助けなくては、自分に出来ることは少ないかもしれない、もしかしたら自分のがひどい目に遭うかもしれない。

だけど行かずにいられなかった。

それが黒子テツヤの正義だからだ。



「ねぇちょっとあなた達」

そんな綺麗な声が聞こえた、綺麗で強い凜とした声。
黒子の行る場所とは違う所から現れたその人は暗闇の中からゆっくりと出てきた。

「んだぁテメーは、あぁん?」
「犯すぞコラァ」
「るっさいわねぇ…口は随分達者なようだけど道具に頼るなんて自分が弱いって言ってるようなもんだけど」
「あぁ?」

熱くなるヤンキーグループに対峙したのは一人の真面目そうな女性。
品行方正な正装の制服に黒い髪色、細い眼鏡をかけ黒皮のローファーと控え目な色したスクールバック。
大人しそうなその少女に黒子は見覚えがあった。
同じ高校の同じ学年の同じクラスの生徒、今日のオリエンテーションでは委員長に立候補していた人。

そんな少女がヤンキーに喧嘩を売っている、相手は勿論買う気漫々だ。
少女は鞄をポイと工場の壁に投げるとポキポキと指の関節を鳴らした。

「見たところその人一般人だけど」
「だから何だよ」
「取り敢えずなんでそいつに手をあげてるのか教えてくれない?」
「うるせーな、ヤれ」

ボスのような厳つい装飾をした男が取り巻きに指示をした、小柄な女に余裕の顔で下っ端が一人向かっていった。

「聞いてるの?何の理由があってその人に手を」
「おらぁ!!」
「出してるの?」

全員が目を見開いた。
質問を続ける少女に殴りかかった男は一度受け流され直後首のあたりに肘鉄をくらわされ少女の横で気を失っていた。

「ねぇ、なんで?」
「つ…つぇえ…」
「狼狽えるなよ、相手は一人だぜ?教えてやるよお嬢ちゃんーコイツの親が金持ちでお金もってそうだから巻き上げるついでに殴ってんだよ!」
「なる程、つまりあなた達は弱いものイジメをしているのね?」
「何がいけないのかなぁあ?」
「弱い奴ほど弱いのに手を出すのよね」
「んだと!?」

ボスのような男がいよいよ前に出てきて少女と睨み合った。
しかし少女はニッコリ笑って。

「アンタみたいに性根腐ったヤローなら一方的でも構わないわよね…テメーの正義はなんだっ!!」
「あ?ぐふっ!!」

言い終わるやいなや、少女は片足を軸に後ろ向きで回し蹴りをかました、しかも見事に空に向かって上がった踵が男の鳩尾に当たった。
大男でも鳩尾は痛い、呻いてしゃがんだ男の顔をまたそのままの回転力で蹴り飛ばした。
男は身構えたがあまりの衝撃にぶっ飛ばされ取り巻きたちの方へ。

「なん…だ早くて見えねぇ…」
「兄貴…あいつ…思い出しました」
「なんだよ…」
「閃光の更格驢(カンガロ)って聴いたことあります?」
「あぁ…早い蹴りを武器とする…まさかあいつが?」
「女だって噂もありましたし…」
「……逃げんぞ…だとしたらアイツのバックも相当やべぇ…」

ヤンキー達はそそくさと逃げていき後には少女と暴行を受けた少年が居た。
少年は立ち上がる力がないのか座り込んだままお礼をひたすら連呼していた。

「お礼はいいから、私はただ自分の為に…自分の正義の為にあなたを助けただけ…大丈夫?帰れる?」
「はい、ありがとうございます…もう大丈夫ですあの…お名前は…」
「名前?………さちこよ、それじゃあね、一人で歩くときは人通りの多いところを歩かないとダメだよ、この街は危険すぎる」

少女は投げた鞄を拾ってまた暗闇へと消えた、気付けばもう辺りは真っ暗だった。
そして今まで目の前で起こったことを見守ってた黒子は一人「見つけた……」と呟いていた。





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