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君に贈るダリア11
「はよー」
「笠松、おはよう」

今朝は冷え込み、制服の上からコートを着込んだ小堀と昇降口で会った。
上履きに履き替えて二人で教室に向かう。

「なんか笠松、随分重装備だな」
「あぁ…実は今日からバスケ部の練習見てやることにしたんだよ」
「そ……っか、そうか…安心したよ」

安心?そう首を傾げれば小堀は「いや、いいんだ少し嬉しくなっただけ」だとそう言ってこれ以上の話を濁した。

「笠松ーっ」
「森山、おはよー」
「んだよ元気だな」

森山もつい先ほど到着していたのか少し駆け足で此方へ向かってきた。

「あれ…あぁ…なる程な……つかお前だって元気じゃねーの?笠松よー」
「どーいう意味だコラ」
「その荷物バスケ部関係だろ?」
「今日から練習見てやるんだよ」
「そーだな、良い考えだ」

森山が顎に手を当ててニヤニヤ、それからなにやらしみじみと思いふける仕草をした。

「そーいや昨日聞けなかったデートの話聞かせろよー」
「あぁ?めんどくせーなぁ」
「いいじゃん、しかもデート否定しないし…」
「なっ…デートじゃねぇよ…」

俺は少し顔が熱くなり慌てて森山に否定した。
小堀もニコニコしてるし完全にこいつらいじりモードだ。

「俺も気になるなー」
「んだよ小堀まで…別に何もねぇよ?大体最初は黄瀬いたしよー」
「最初は、だろ?その後だよ気になってんのは!」
「ちけーよ森山!顔近付けんな!」

森山はぐいぐいくる。
今日、初めて森山と小堀が同じクラスで嫌だと感じた…解放されねぇ…

仕方ないので二人で帰ったことと途中の公園で子供たちとバスケしたことなんかを話してメルアドの交換をしたことも伝えた。

「笠松、それを世間ではデートというんだ羨ましい」
「向こうはそういうつもりじゃないと思うけど…」
「そうかなぁ……」
「どういう意味……あ」

丁度チャイムが鳴って、小堀はニコニコしたまま自分の席に戻っていった、くっそ席遠いな。
担任もすぐ来てしまい、小堀の意味深なセリフの意味は聞けなかった。



「小堀!」
「ん?」
「さっきのなんだよ…」
「深い意味はないよ?森山も言ってただろ?世間ではデートって言うんだって」
「そ…そう言うことか…」
「むしろ笠松はさちさんがデートだって思ってるって確信したかった?」
「え」

つまり口ではさちさん位の人ならあんなのデートだと思っていない等と言っておきながら、心ではさちさんにデートだと思っていてほしかった?
いや、そんな事思っていなかった。
違う、きっと…違う。

「ほら笠松、一限目始まるよ」
「あ、あぁ…」

その後はなにかモヤモヤした気持ちのまま放課後を向かえてしまった、授業内容は頭に入らないまま常にさちさんの事が頭に浮かんだ。

「笠松、俺ら今日は帰るな!」
「明日からは俺らも参加させて貰うからなー」
「おー」

生返事してしまったことで我に返った、そうだ今からバスケ部に顔出すんだ…元キャプテンとして恥の無いような顔をしなくては。
職員室に向かい、部活に参加しても良いかの話をして無事許可を頂き遅めに部室についた、もう皆は体育館だろう。

「笠松先輩、お帰りなさい」
「え?」

部室の前で声をかけられて振り向いた。
黄瀬や早川、中村達バスケ部の面々がそこに居た、外周でもしていたのだろう汗だくで体育館とは逆の方からきた。

「お(れ)達、先輩が来てく(れ)るってきいて…早く外周終わ(ら)せてきたっす!」
「待ってました、寂しかったんですよ俺たち…先輩達の進路決まってるって監督から聞いて知ってたし、てっきり練習見に来てくれるっておもってて」
「笠松先輩の気持ち、分からなくもないッスけど…でも俺たちのキャプテンならって……スミマセン、お帰りなさい!」

嘗ての仲間が口々に自分がバスケ部に戻ることを望んでいた旨を伝えてきた、これほど、これほど嬉しいことはあるだろうか、一年前のあの時の失敗からこれまで悩んで悩んでそれでも決心して続けてきた自分のバスケットが…

認められていた。

「早く一緒にや(り)ましょ!!」
「早川、まず先輩着替えさせてやれよ」
「あっスンマセン!!」
「…ありがとな」
「…なんか(お)れ達…笠松先輩にシバか(れ)ないとシック(リ)こないっていうか」
「おーおー言ったな?んじゃお前ら俺が居ない間どれだけうまくなったか見てやるよ!」

バシリ早川をど突けば「これだぁ!」って雄叫びをあげて回りの奴らは爆笑していた。
何の為にバスケットしてたかなんてそんな事関係なかったんだな、勿論自分が楽しいからやっているんだ、そして仲間が居るから続けてこれたんだ。

ここに、こんな近くに理由があった、それを思い出させてくれたのはさちさんだ、背中を押してくれたのは彼女だ。

俺はさちさんが好きなんだ。

だからデートであってほしかったんだ、だから居心地がいいんだ。


体育館に向かう途中で黄瀬が「さちっちのおかげっすかね」なんてニヤニヤしてるから「そーだな!」つってシバいてやった。



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