小説 | ナノ




君との新しい世界
地味な私は今日も放課後は大好きな本に囲まれ大好きなネットの音楽を聴いてそうして時間を過ごすのです。
帰ったところでテレビは見ないし、メールとかチャットとか出来る友達もいません。

この物静かな図書室で一人、物語の世界に入り込んで微睡むのが好き。

だから図書委員になって3年、殆ど私は図書室で毎日仕事をしていた。
先生は押し付けられてるとか心配してたけど、いいよそれでも、私は仕事でなくてもここにいるつもりだったから。

それでいいってずっと思ってたのにある日私は…恋をしてしまいました。

それはいつもの図書室でいつもみたいに仕事をしていた日。
いつもより体が熱くて今思えば風邪を引いていたのだと思うけど、学校は休むとノートを貸してくれる友達が居ないから休ま無いことにしていた。
どこかのクラスが使っていたのであろう返却のあった大量の辞書を1人で棚に戻していた所なんだか目の前の本達が混ざり合ってそれからフッと視界が真っ黒になった。

次にみたのは真っ白な天井でぼーっとした頭で何が起きたのかを整理していた。
「起きたの?大丈夫?」保健の先生の声、ここは保健室のようだ。

「あの…」
「あなた、そんなに熱があるのになんで学校きたの?」
「あ…えっと」

まさか先生に友達が居ないから休めないなどとは言えない。
「学校で本を読むのが好きで…」と言ったらあきれた顔をされてしまった。

「そうだ、倒れているあなたをここまで運んでくれた子だけど…」
「えっ…子って生徒ですか?」
「発見者もその子よ、今頃あなたの代わりに図書室にいるんじゃないかしら…」

先生がそういい終わる頃、ガラガラと勢いよく扉が開いて。

「先生!図書室の子!大丈夫だったっすか!?」
「もう少し静かに出来ないの?早川君」
「ごめんなさい!」

早川君と呼ばれた男の子はそれでも大きな声であやまった、面白い子だなぁ…って見守っていたら目があった。

「先輩ですよね?大丈夫っすか?」
「うん…ありがとう」
「気にしないで下さい!あんな重たいの先輩だけじゃ難しいっすよ!」
「あ…えっといつも1人でやってて、今日はたまたま…風邪っぽくて…」

相変わらず声の大きな早川君に保健室の先生は最早めんどくさくなったのかさっさとデスクに戻ってしまった。

「風邪じゃなくてもダメっす!今度ん時はお(れ)を呼んで下さい!」
「へ?」

今、彼はなんと……?

おえ?

いや、文脈からすればもしかして「俺」と言ったのか…
だとしたらなんと優しき言葉をかけてくれたのだろう…

「ありがとう、でも悪いし…」
「そんなのダメっす!また具合わ(る)くなって倒(れ)ちゃった(ら)どうす(る)んっすか!」

こ……これは……
難易度があがったぞ…でも、今こそ小説を読みまくった私の読解力を使うとき!
何時使うの?今でしょ!

「気持ちはうれしいです…でも呼ぶったってどうやって」
「えーとおっきな声で叫ぶ?」
「早川君、白石さんが困ってるでしょ?あなた携帯はどうしたの携帯はー」
「忘(れ)てた!!」

早川君の叫ぶ発言に見かねた先生が口を挟みなんとか叫ばなくて済みそうだ。
しかしここで新たな難関が…
私…男の子とメアド交換するの…初めてだ……
緊張して顔が熱い、しかし早川君はいそいそと携帯をとりだし「どーぞ」なんてニコニコしてる。

「あっ…あの…こういうの始めてて…やり方わかんな…い」
「そうなんですか?えーっと貸して下さい……」

私の携帯を早川君はなれた手つきで操作した。
すると私の携帯から聞いたことのない軽快な音が聞こえてどうやら赤外線が成功した音らしい。

「わぁ……交換しちゃったぁ…」

早川君から返して貰った携帯には新しい連絡先、嬉しくて感嘆の声をだしてしまい恥ずかしくなって顔が赤くなる。

「……先輩かわいい…」
「へ?」
「あ…いやなんでもなっいす!えーっとなんかあった(ら)メー(ル)して下さい!あ!何もなくてもメー(ル)していいです!!」
「え、う…うん…」

そう言って早川君はバタバタと保健室を後にした。
残された私の心臓はバクバクで1人まさか恋!?と興奮していた。



それから毎日、携帯に早川君からのメールが届くようになりました。
彼はバスケ部で夏休みにはインターハイがあって自分も出るんだって楽しそうな学校生活の話をたくさんしてくれる。

同じ学校にかよってるんだよなー…
そうは思えないほど私とは比べものにならない程の青春をしていて。

「私とのメールって楽しいのかなぁ…」


1人の図書室にため息が溶ける。

「先輩!」
「んへぇ?」
「会うのひさしぶ(り)っす!」
「ひさしぶり…だね」

珍しく音もなく入ってきた早川君私は驚いて変な声が出てしまった。
だけどそれは気にならなかったのか早川君は相変わらずの眩しい笑顔で話しかけてくれた。

「早川君、図書室では静かなんだね」
「え、だって先輩が…」
「私?」

早川君の話し声は前に保健室で聞いたときとは比べ物にならないくらい小さな声で。
不思議に思ったことを口にすれば早川君から私の話がでた。
はて、早川君に私はなんと言ったのだろう…

「お(れ)がいつも部活の先輩に怒(ら)れて(る)って話したときに先輩、教えてく(れ)たっす」
「えっと…深呼吸してゆっくり喋る……」
「そう!そ(れ)!」

そうだ…いつもうるさいって怒られる早川君に落ち着いて話す時の方法を教えたんだった。
私がいつも緊張してるときに使う方法。

「実践してくれてるなんて嬉しいな」
「だって…そ(れ)い(ら)い、お(れ)ずっと先輩のこと忘(れ)(ら)んなくって…」
「えっ」

早川君が照れ臭そうにしている姿をみてキュンとしてしまった私は顔が真っ赤になってしまった。

「そ(れ)に…先輩、お(れ)の言葉聞き返さないし…」
「え…うん、だって分かるもん」
「他の人はいっつも聞き返します」
「たしかに聞き取りにくいかもしれないけど…でも…早川君って嘘いってないから…私にはちゃんと伝わってるよ!」
「っ……あぁー……もー…」

早川君は急に頭をがむしゃらに掻いて、私に背を向けた、私…変なこと言ったかなぁ…どうしよう怒らせたかも…

すると早川君は勢い良く振り向き、座っている私の方へ乗り出した。

「先輩のこと好きです!!」
「えっ…あ…ありがとう……?」
「そーじゃなくてっ!!」
「えっ…えぇ?」

急な早川君の好意にどうして良いかわからずあたふたしてたら肩を勢い良く捕まれて、気付けば目と鼻の先に早川君。

「つきあって下さい!!!」
「きゃっ…あ…はいっ」

驚きのあまり勢いで返事をしてしまってハッと我に返る。
この流れって…恋人同士ってこと!?
どうしよー!!……って想ったのも束の間、目の前には頬を染めて「スッゴく嬉しいっす…えへへ」って笑う早川君がいて。

「こんな私ですが宜しくお願いします」
「こち(ら)こそ!」


なんて、どうしようなんて気持ちはどこかへ行ってしまったのでした。




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