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彼女に体育着をはかせた人
「小堀発見っ」

春真っ最中にヒマワリのような笑顔と高校生にもなって落ち着きが無いのだろう事が丸わかりのスカートから覗く膝についた絆創膏が印象的な女の子、幼馴染みではないけど縁があって小学校から同じ学校に通い何の因果かいつも同じクラスだった人。
それが俺の名前を読んだ俺の初恋の人でもあり今も思い人である

「さちこ?どうしたの慌てて」
「えへっじゃーんっ」

さちこが見せてきたのはユニフォーム、女バスのだ、それも8番。
先日俺がもらった番号と同じ、番号。
「おそろいだって思ったからね早く報告しようって!朝一!!」なんて無邪気な笑顔のさちこ、女バスは昨日ユニフォームがあてがわれたのか。

「本当だ、おそろい」
「んふふー嬉しいー」
「そっか、俺も嬉しい」

素直に頭に浮かんだ言葉を屈託のない笑顔でポロリとこぼすから、俺の心臓はドキドキと落ち着かないのに、この関係が終わってしまわぬようにいい居心地のままで居られるように。

いつだって自分を誤魔化してきた。

さちこは昔からあんなんで一回肝を冷やされたことがあった。

あれは高校2年の夏、バスケットゴールのある公園で2人でバスケをして遊んでいた、その時さちこは水色のワンピースでとてもかわいらしかった。

「さちこ、上手になったね」
「んふっあのねー小堀見てると上手になるの」
「えぇー何それ」

さちこは女子としては平均の身長だし手足が長い、とかそう言うことではない、だから彼女のポジションはスモールフォワード。
ポイントガード程ではないけどそれなりに機転と柔軟性が求められる。
俺のポジションではない。

「さちこのポジションと俺のポジションまったく違うけど」
「メンタル部分の話なの」

不意にさちこがボールを片手うちしてシュートを決めた。
さちこは確か両手うち、なのにかなり精度の高いシュートをして見せた。

「私ねー小堀みててバスケット始めたんだよ」
「そうなんだ」
「そうなの、だからね私早く小堀みたいになりたい、小堀みたいに大好きな事、うまくなりたい」

そう言ってさちこは今度は3ポイントラインから片手うちのモーションで飛んだ。

ひらひら舞うワンピースの下が見えてしまっていた。

しゅぱっ…そんなリングにかすりもしない綺麗なシュート、入る瞬間なんて見ていなかったけど音でわかる、それよりも想い人の秘密の部分を見てしまった衝撃たるや…

「小堀?」

手の甲で口元を隠して、熱い顔をそっぽ向けて、そんな俺を訝しげに見守るさちこが俺の名前を読んだ。

「さちこ、これからさ、スカートの下にズボン履いてくれないか」
「どうして…」
「俺はその方がいいから」

さちこは少しキョトンとしてから、「うん!わかった!」って花を咲かせた。

それから翌日「みてみて小堀ー」なんて言ってスカートを捲って体育着を履いてるとこを見せてきたのにはまた驚いた。

だけど、こんなさちこを知ってるのは俺だけなんだって、さちこにずっと追いかけてもらえるために、よりいっそうバスケを頑張っているご褒美なのかもなって、そう思った。



「小堀ー俺は今日とても残念な思いをした」
「え?どうしたの?」
「なんでさちこちゃんってスカートの下に体育着はいてんの?」

それはね森山、俺だけの秘密なんだよ。





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