小説 | ナノ




君に贈るダリア8
今日は黄瀬です。
現在、ちょーお洒落なカフェで大事件が起きてます。

あれは数日前のこと。
笠松先輩とさちっちの事でどうしたら2人を仲良くさせることが出来るか考えていたところ(主に笠松先輩の女性が苦手って部分に問題があるッスけど…)
しかしなんと笠松先輩から「さちさんと話がしたい、何とか会えるように手配してほしい」なるメールが送られて来て、俺のテンションも高々と「勿論ッス」なんて返して、さちっちと笠松先輩をとあるカフェ(高い敷居がしてあり有名人御用達)に連れてきた。

さちっちもオフの貴重な日曜日、俺だって暇じゃないんッスよー……だから笠松先輩なんでそんな怖い顔してんッスか!?
どう見てもさちっちと仲良くしましょうなんて雰囲気じゃない、さちっちもなんかホトケのような顔してるし…

長い沈黙が耐えられなくて俺は笠松先輩に声をかけた。

「あのー…なんかあったッスか先輩…」
「……ギター…」
「ギター?」
「欲しかったギターが手に入ったんだよ」
「そりゃよかったッスね!」
「よくねぇよ!!」
「ひっ」

喜ぶべきところなのになんで今の俺は笠松先輩に怖い顔で怒鳴られたッスか!?
さちっちもなにか困ったような顔になってるし。
そしたらさちっちが「ごめんね」と苦笑いを零した。

「きっと笠松くんにとっては重いお礼かもって思ったの、ただ重くてもいいかなって思ったの、私はそれくらい…それ以上の事を笠松くんにして貰ってるから」
「でも…あんな高価なものっ」
「私は自分の価値はあのギターより高いと思ってる」
「そりゃ、そうかもしれないですけど…」

さちっちが自分の命の価値の話をするときガラス玉のようにキラキラしたきれいな瞳が真っ直ぐ笠松先輩を捉えていて、笠松先輩の次の言葉はどんどんと小さくなってさちっちを見ていた顔もそらすように窓の外へ向いた。

「さちっちもなんか不器用ッスね」
「私は男性経験ないからね、わかんないの、特に笠松くんみたいな真面目な人ってあまりこの業界にはいないから、どうして貰ったら喜ぶかなんて…」
「まぁ…そーッスけど」
「この様子だと失敗みたいだけどね、ごめんね笠松くん、ギターは何かの懸賞にあたったかラッキーくらいに思っておいて?」

さちっちがもうこれ以上笠松先輩と居られない(勿論笠松先輩の女性が苦手っていうのを考慮して)と思ったのか残っていた紅茶を飲み干して立ち上がろうとしたけど、笠松先輩が今度は真っ直ぐさちっちを見据えていた。

「……無理です、あれはさちさんが俺にくれたもんですその事実を無かったことになんてできません」
「真面目だね…」
「だけど、俺別に迷惑とかそんなんじゃないんです…嬉しかったんです、ただ…俺あんまプレゼントとか女の人にして貰ったことなくて、どういう風に反応したら良いかわかんなくって…それで」

笠松先輩の顔がみるみる赤くなっていくのがわかった、言いたいこともホント滅茶苦茶になってきたし。
だけどさちっちの瞳が揺らめいて、それでスッゴく幸せそうな顔してて。

これ以上は野暮だって。

「笠松先輩、もう少しさちっちと話した方がいいッス、さちっちの話を聞いてあげてほしい」
「…あぁ」

それを聞いたさちっちが再び椅子に腰掛け「ありがとう黄瀬君」って何時もの笑顔が帰ってきて。

2人の甘酸っぱい関係が始まるかもなんて嬉しさを噛み締めながら俺はその場を後にした。



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