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君に贈るダリア7
「ひーまーだー」
「……」
「由孝くんは今とーってもひまでーす」
「…………」
「かまってほしいでーす幸男ちゃーん」
「っるっせぇ森山!!勉強しろ!」
「幸男ちゃーん、僕たち推薦でぇーす」
「ちゃん付けんな…僕とかきめぇ」
「森山そんなに暇ならこれから受験で困ってる女の子たちに勉強教えてあげられるように勉強しような?」
「小堀、それだ!!」

登校日よろしく俺達は自習時間もみんなで集まって勉強していた(森山はぬかして)小堀は相変わらず森山の扱いがうまい。
俺達は皆バスケットを大学でも続けるため設備の整った大学へ進学することを望んでいた。
バスケット強豪の海常高校は俺らの希望する大学への推薦枠を持っていて、必然的にバスケ部の俺らは推薦を貰うに値する資格を持っていた。
今、勉強するのは大学での授業に遅れないためだ、推薦で入れるから勉強しないのは間違っている。
森山も小堀のおかげで勉強を始めて大人しくなった…いつまで持つやら。

「今日って4限までだったよね?」
「だな」
「何時ものスポーツショップに買い物行くけど2人ともいく?」
「行く行く!!」
「笠松は?」
「行く……何時もんとこなら俺も寄りたいとこあるけどいい?」
「じゃ3人で行くかー」

と、遊びに行くことが決定された。
結局あの後、森山の集中は続かず最近のテレビの話が始まり、俺と小堀がそれはもう適当に合図地を打つ、という感じで時間が過ぎてあっという間に4限終了

「昼飯どーする?」
「向こうのマジバでよくね?」

森山が適当に答えるも小堀の質問に対して回答は1択だった。
高校生の財布事情は厳しい。

「俺、バイトしようかなー…」
「バイトってなんの?」
「やっぱショップ店員とか…」
「女性客きたらどーすんの?」
「………」

そろそろこのコンプレックス何とかしないとな…
女が苦手って仕事出来ないだろ…
だらだら喋りながら電車に乗り込み、目的地へ向かう。
腹ぺこの俺らは速攻でマジバに入っていった。

「そーいや笠松、さちさんのことどうなった?」
「あ!それ俺も気になってた!」
「あれから特に何もないけど……え?」

マジバでポテトを頬張る俺に食い入るように聞いてきた小堀と森山だったが俺の一言に神妙な顔をした。

「お前…あれだけの美少女を…」
「森山…違うってそうじゃない…あのさ笠松、こないだ言おうと思ってやめたんだけどやっぱいい機会だしいうわ」
「なんだよ改まって……」

小堀が眉を下げてふぅっと息を吐いて、それから真剣な顔をした。

「笠松は人助け程度にしか思ってないみたいだけど、笠松はさちさんの命を救ったんだよ。ピンとこないかもしれないけどもし、笠松が助けてあげなかったらどっかに連れられてイタズラされて…最後には証拠隠滅って……」

ゴクリと俺は唾を飲んだ、小堀が続きを言わなくてもその先を想像出来て…恐ろしくなった。
さちさんは有名人で、あの時もしも誰かが助けなければ殺されていたかもしれなかったんだ。

「どんなに感謝しても仕切れない相手に何もしないなんて普通はできないし、それを有り難く受けるのが優しさじゃないかと思うんだ」
「そ…だな…」
「女性克服のいい機会でもあるし、もう一回ちゃんと会うべきだよ」
「…黄瀬に連絡取ってもらうわ」

そう言うと小堀は安心したように笑った。
大人しい森山を見やれば黙々とポテトを摘まんでいた、それはもう神妙な顔つきで。

「なんだおまえ…」
「だって…小堀まで俺を蔑ろにするから…」
「えぇー、ごめん森山…」
「小堀は悪くねーから謝んな」

そして再びブーブー言い始めた森山を宥めつつ、飯を終わらせスポーツショップへ向かった。

「これこれ!」

小堀が目当ての物を見つけたらしい。
それはバスケットボールの形をしたにおい玉。

「なんでにおい玉?」
「暫くバッシュ履かないから、洗った後突っ込んどこーっておもって、どうせならバスケットボールの奴がほしくてさ」
「小堀ってたまにかわいい思考してるよなー俺もかおーっと」

森山が便乗してレジに向かった。

「それで笠松の行きたいとこって?」
「よく行く楽器ショップ、今日は折角だから弦、新調しようとおもってさ」
「なる程ー」

そう言ってスポーツショップから出た俺達はまた他愛のない会話をしながら楽器ショップに入っていった。

入ってすぐあることに気づいた。
ずっといいなーって思ってたギブソンのギターが無くなっていたのだ。
買えないものだと思っていたしそこまでショックではないが、なんとなくもう見ることはないんだと思ったら寂しくなった。
まぁ友人も待たせているし、とすぐに目当てのギターの弦を手にとってレジに向かった、いつもの店員が弦を受け取ってすぐ「あ」っと声を漏らした。

「君に届け物があるんだよ」
「……え?」

そう言って店員はレジの向こうの事務所へ入っていってすぐ出てきた。
ギターケースを抱えて。

「これ、君がよく見てる奴で間違いない?」

ギターケースが開かれる。
そこにあったのは紛れもなくギブソン。
俺はゆっくり頷いた。
店員はそれを確認するとケースを閉じ、それを俺に渡した。

どういうことだ。

「これね、うちのお得意様が君にって買った贈り物なんだよ、大切にしてあげてね」
「ちょっとまってください!!こんな高価なもの貰えません!」
「そういわれてもねぇ…購入した人が君にって…」

このタイミング、名前を言えない人間、ギター…どうしてこれを俺がほしがっているのか知っているかはさておき多分購入したのはさちさんだろう。
彼女はギターも演奏すると聞いたことがあるからここの楽器ショップを知っていても不思議じゃない。
俺が眉間に皺を寄せていると俺の大声に気づいた小堀がやってきた。

「どした?」

覗き込む小堀に目の前のギターを指差す。

「これ…多分…さちさんだ」
「……そうかもね…でも…取りあえず受け取りなよ、店員さん困るし、感謝も文句も本人に直接言ったらいい」

熱くなっていた頭が小堀の一言で落ち着いて、そのギターを受け取りショップを後にした。
帰りの電車内、森山も小堀も解散するまでギターとさちさんの話で盛り上がっておりおれはそれを横目にメールを作成していた。


もちろん…黄瀬宛てに。






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