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モモイロノカタオモイ
あのね、大ちゃん、わたしね、あの人が好きなの、だからね、大ちゃんの事心配って言うのもあったけどね、どうしても側にいたかったの、だからここにきたの、叶わなくても良いの、叶わなくても。



だけどやっぱり辛いよどうして私に生まれたんだろう。



目の前でわんわん泣く幼馴染みのさつきは長年の想いを俺に話してくれた。
俺も知ってる中学校の時お世話になった先輩、桐皇に進学してまたお世話になってる先輩。
厳しい人だけど真っ直ぐでかっこよくて、人気者だった。
失恋したかと聞かれればそうではないと思う、だけどさつきが泣く理由を知っている。
一通り泣きはらして最後に俺に言うのだ。


私、大ちゃんだったらよかった。


そう、さつきの愛する人は他でもない。
白石さちこという、女性だ。






モモイロノカタオモイ





「さちこせーんぱいっ」
「あら、さつきちゃん、桐皇にきたのね」
「はいー、大ちゃんも一緒ですよぉー」

久しぶりに見た先輩はスッゴく大人っぽくなっててキレイで、カッコ良くて…
私はやっぱりここにきてよかったって思って、だけどとても心配だった。
こんなにすてきな人ならきっと彼氏とか居るかも…もしその彼氏に私も見たこと無いような顔見せてたら……
嫉妬でどうにかなってしまいそう…

「さつきちゃーん?」
「あっはい!」

私から声をかけたのに思案していてまって先輩の呼びかけに気づかなかった。
大丈夫?なんて私の身を案じてくれる優しいところはあの時のまま。

「さつきちゃん、もしかして青峰君とつき合ってるの?」
「え!?何でですか!」
「幼馴染みとは聞いてたけど高校まで同じなんて……」
「違いますよぉー…先輩こそ彼氏とかどうなんですかぁー」

むすーっと膨れて見せて我ながらうまい返しをすればゴメンゴメンなんて手を顔の前にだしてポーズを取る、そういう仕草にかっこいいなぁ…って思っちゃう。

「彼氏はいたこと無いよ?」
「えぇ!さちこ先輩すっごく魅力的なのにぃー」
「そんなこというのさつきちゃんだけ!バスケ部の奴らなんか私のことガミガミばばぁって言うのよ!」
「ひっどーい!もー今日のスポドリナシですよ先輩っ」
「ふふっそうねー、ありがと!」

さつきちゃんがバスケ部のマネージャーになってくれたら私もうれしいわって頭を撫でてくれて、ドキドキしてるの伝わっちゃうかな…なんてフワフワした気持ち。

「放課後まってるわね」
「はい!!」

見た目の雰囲気はすっごく変わった、けど中身はあの時のまま…
私が1年なのにバスケ部1軍のマネージャーになって周りの子に疎まれてたあの時のまま…。

空き教室に呼び出されて、部活はもう始まってる時間で、周りに知らない女の子、きっと他のマネージャーのオトモダチ。
いっぱい嫌みを言われて、黙ってればどつかれて、泣きそうになったあの時。
あの場に不釣り合いな凛とした声が響いて、「うちの大事なマネージャーになにしてんの」私は吃驚した、マネージャーはみんな敵だっておもってた、なのにさちこ先輩は私を助けにきてくれた。
それから私がいじめられることは無くなって、私は感謝しきれず当然のようにさちこ先輩に懐いた、彼女もまた1軍のマネージャーだったし。
後から聞いた話で、私は恋に落ちたんだ。


「真面目なさつきちゃんが部活に居なかったから慌てて探したのよ、真面目にやってるから昇格したのに酷い連中ね」


だって、認めてくれて、こんなかっこいい先輩…
惚れないわけがなかったんだよ。
だから、私…桐皇にどうしても行きたかった。
どうしてもまた一緒にいたかった。
叶わなくても良いの。






だけど


やっぱり


溢れ出しそうな程の想いを


ずっと堪えるのは無理だったから


2人きりのお昼の屋上


「さちこ先輩……好きです」
「どうしたの、さつきちゃん」


言っちゃったの


言うつもりなんてこれっぽっちも…


小さな声だけど言っちゃったの


先輩は心配そうな顔してて


でも誤魔化したくなくて、嘘は付きたくなくて、だから心配そうに覗き込む先輩のおでこに


キスをしたの






「私、明日からどーしよー」
「お前、バカ」
「大ちゃんに言われたくない」

さつきが鼻水を啜りながら睨みつけてくる、涙の後が付きっぱなしでまったく凄みもない。
こんな状況のさつきを1人で帰す訳にも行かないし一緒に学校を出る。
なるべくゆっくりした歩調で、さつきの為じゃない。

「さつきちゃん!!」

ほらきた、だからバカなんだよさつきは…なーんもわかってねぇ。

「先輩…」
「部活…来なかったわね…」
「すみません……」
「まぁ…でも私が悪いわね…ゴメンねさつきちゃん」

俺の横で目を見開いて固まるさつきが息をのんだ。
先輩はそれでお前を嫌いになるような奴じゃない、もっとデッカい人。

「言わないと後悔すると思うんだ」
「き…聞きたくないです」

また見開いた目に涙が浮かぶ。
大丈夫だってさつきの背中を押して前に出す。

「さつきちゃんの気持ちは嬉しいよ」
「え…?」
「だけど難しいことだと思う、成立なんて無理かもしれない…だけど尽くせる最善はあると思う!」
「さちこ先輩…」
「だから、私もさつきちゃんの事好きだよ!友達以上、恋人未満…じゃダメかな」
「…っ十分ですぅ…わぁぁあん!」

溜まっていた涙が溢れ出して泣きじゃくるさつきの手を先輩が掴み、俺に「ありがとう」そう言った。
その意味をかみしめその場を後にした。



後日、キャプテンたちが「ガミガミばばぁが2人になった…」と呟いた直後そのガミガミばばぁ1号に痛いめあわされていた事は俺しか知らない。



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