「つーかさちっち勇者ッスわー」 あの後学校は騒然とした、進路指導室は昇降口入って右の廊下の1階一番奥にあり購買部はその間…つまりさちさんは未だ鬱蒼と茂る購買部前の人という森の中を通過していったものだから今は学校中で騒ぎになっている。 そんな中を俺達まで通ったらどうなるか…あらぬ噂を立てられ晒し者になるのが落ちだ。 つまり現在進路指導室の中に俺、森山、小堀……そして黄瀬。 「つか、なんで黄瀬いんだよ!」 「放送で先輩呼ばれてたんでちょっと」 からかいに来たわけだな…シバく。 「いでででででで!」 「にしても笠松すごいなぁ、勇敢って言うか」 「ホントホント!女子苦手なのによくやったわ…うらやましい」 「先輩達助けてッスー…でも本当にさちっちスッゴい感謝してると思いますよ」 ウィンターカップが終わり帰宅した日のことを思い出して先程森山たちに話したのを思い出した。 「あぁー…ムシャクシャしてたしなぁー悔いが残らない試合はしたつもりだ…けど…やっぱそうはいかねぇんだな気持ちってのは…」 そう、悔しくてそっとしておいてほしくて静かな道を選んだのに聞こえてくる不愉快な軟派の声、それこそバスケ一筋で硬派にやってきたつもりの俺としては耳障りだった。 「助けた…とはまぁ思ってるけど、半分は八つ当たりだしな」 「つか生徒手帳お前、鞄の外ポケットに入れてなかった?振り回したときに飛んだんじゃ…」 「あー…そうだわ、もうホントムシャクシャしてたからあんま覚えてねー」 実際、試合の事で頭いっぱいだったし、軟派なんか忘れてた。 「先輩、さちっちちゃんと相手してやってくださいよー俺、すっごいモデルの仕事でお世話になった人なんで!海常に決めたのもさちっちが勧めてくれたからなんッス」 「えーなんでだよー」 確かになんで歌手のさちさんが海常をすすめんだ? 「そう言えば、先生とも親しそうにしてたよね」 そうだ、帰り際に先生に会釈して、先生も「またなー」って…… 「卒業生……」 「え…まじで?」 俺の呟きに他の3人がハモる、今日何回ハモってんだよ俺ら… するとやつらは進路指導室の中を漁り始めた、ここには進学者や就職者の卒業生一覧が保管してある。 「さちっちが歌手も始めたのって3年前ッス」 「俺達の3年上だな!!」 「あったよーこれじゃない?」 皆で一斉に覗く。 「あったッス!……白石さちここれッス」 「本名公開されてないのに知ってるってのは黄瀬流石だな。」 その流石はおいといて本当に卒業生かよ。 海常高校って探せば他の有名人もでてんじゃね? 「よし!笠松をダシにさち呼び出そう!つきあいたーい!」 「ダメッス!恩人の先輩をこんな女タラしに!嫌だー!」 「あーもーちょっとお前ら黙って…」 「でもダシもなにもの前に笠松、お礼くらい受けときなよ?命の恩人なんだし」 「そーッスよ!さちっちにはじかかせないで下さい!」 「そーだそーだ羨ましいやつめ」 最後の森山はなんか違う気がするが…命の恩人?んな大袈裟な… 「まぁ……どうせ多忙だろうしこの話はまた今度な」 そう言えば不満そうな黄瀬と森山、そして何か言いたげな小堀。 予鈴がなって昼休みの終わりを告げ、俺達は自分の教室へ帰っていった。 |