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青春の背比べ
帝光中学校、由緒あるバスケットボール伝統校、誰がなにも言わずとも生徒は皆、バスケの伝統校など関係なく文武両道をわきまえ、帝光のブランド目当てで各地方から様々な生徒がくるような誇り高き中学校。
私はそんな帝光中学校に幼き頃から(物心ついたときにはもう)夢を見て入学の夢に思いを馳せ、今年、念願かなって入学する事が決まった。
博識こそ人の価値なのだとそう思い、日々勉強に打ち込み周りが騒ぎ立てる全ての怠惰なる誘惑に打ち勝ってそして私はこの帝光入学式の新入生代表を飾るのだとそう意気込んだ入学式の舞台に上がったのは。


「誰なの………っ」


何とも綺麗な赤。

与えられた教室に戻った私は頭を抱えた。
このクラスに先程の赤い奴(あまりの衝撃に名前は忘れた)は居なかった。
どうして…入学テストでは満点だったはず……全国テストも何時だって「1位」……私以外に居ないはず…どうしてっ


答えはすぐ分かった、彼は赤司征十郎はバスケ部の入部が元から決まっていてどうやら推薦入学みたいなものらしい、しかも入学テストは満点。
イケメンだの何だのとのたまっている女子が噂をしていた、間違いはない。


そして幾月日が流れ何度もテストはあったが私は1度も彼に勝てたことはない。
張り出されるテスト上位者の名前はいつも赤司征十郎のすぐ下が私だった。
テスト結果の掲示板の前で何度か目があったことがあるが、私は何時だって悔しい眼差しを向けるしかないから、睨まずに居られずいつも目が合っていた。しかしそのたび彼はにっこり笑うのだ。

勝者の笑み

悔しい!悔しい!

「絶対……負けないからっ」

2年最後の期末テストですれ違いざまにぼそりと赤司征十郎に言ってやった。
絶対…絶対!負けない!!!





しかし私にとって一番、そう文字通り最悪なことが起こった。
三年のクラス替えでなんと赤司征十郎と同じクラスになった。
学年上位者が同じクラスなんて……クラス分けなにやってんのよぉっ!!

「よろしく」

しかも他の生徒の提案でいきなり席替えが行われ赤司征十郎と席が隣りに。

「よろしくされたくない…」
「台無しだな」

ムスッとそっぽ向けば台無し、などと苦笑いをされた、何が台無しだ!せっかくの仲良くしようって雰囲気がですか?よけいなお世話だ。
なんなのよ席替え提案した奴!
いつも新学期は廊下側だから不公平!とか…!お勉強に関係ないこと宣ってるんじゃないわよ!

「面白いなー……白石さんは」
「っ………」
「百面相、表情豊かだね」

私をじっと見つめた赤司征十郎がそう言って笑っていた、それより何より名前を覚えていた…

「俺も負けるつもり無いよ…それが俺だから」

ぼそりとそう言った一言はしっかり聞こえていたし見事に1学期中間は1位を取られた。

「また……」

寝不足になるくらい頑張ったのに…
何度やっても何度やっても…
やっぱり無理なのだろうか…

無性に悔しくてやるせなくて

私は放課後静かになった教室で泣いていた、だって博識こそ人の価値なのだと、だからこそ誰より博識であろうと、なのに……きっと赤司征十郎には勝てない。

「きっと…勝てないんだろうなぁ」
「諦めないでよ」
「え」

ポツリ呟いた泣き言に返事が返ってきて、バッと振り向けば誰もいないと思っていた教室の扉の前にいつの間にか赤司征十郎が、悲しそうな顔をして佇んでいた。

「頑張ればいつかは報われるよ、君は努力家だし」

そういいながら彼は此方へ向かってきた。

「やめてよ!!いつだって私より上にいる癖に慰めないでよ!!そうやって負けることの無い勝者の余裕をたたえて!…人の気もしらないで……っ」

まくし立ててまた涙が溢れた。

「でも、困るな…君が諦めてしまっては…俺がなんのために君の上にたち続けているのか意味がなくなってしまうよ」
「……は?」
「確かに勝利することは俺にとって……蛇足だね。そうじゃない、俺がもし君に負けたとして君は俺を見てくれる?答はノーだね、だって君は自分より優れている人間が居るということが悔しくて俺を見ているんだ…つまりね俺は君の視界から消えたくないんだよ」

赤司征十郎の言っている意味が分からない。
赤司征十郎は私に興味をもってほしい?

「何を馬鹿なことを……」
「そうだ、なら君がもし俺を越せなかったらその時は俺の言うことを一つきいてもらうよ…拒否権はない」
「不公平ね」
「なら逆も然りでどうだろう」

……なんでも言うことを聞いてくれる…なんでも……

「分かったわ、その時はあなたの秘密、全部聞くから」
「随分な自信だね、じゃあ俺からの要求はその時に発表させてもらうよ」

どうしてそんなに頭がいいのか…気になってはいたから知りたいと思った、しかし自信は赤司征十郎にもあるようで目の奥に何か鋭いものを宿らせて赤司征十郎は微笑んだ。



そして結局、私は赤司征十郎に一度も勝つことなど出来なかった、そして私は彼のお願いを聞くこととなった。

何でもと約束で彼の口からでた言葉が「征十郎と呼ぶこと、そして恋人になること」だった。

拒否権はなかったから私は真っ赤な顔で頷いたのだった。



………だけど私はそれ以前に既に彼に惹かれていた語られてない空白の時間の話はまた今度の機会に。



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