それは眩しい光と共に我が家に現れた突然の訪問者。クリーム色のサラサラの髪に緑色の垂れ目がちな瞳。外人までとはいかないが日本人にしたらかなり白い肌。標準より少し痩せていてボロボロの着物を纏っているけど、男女どちらともとれる見た事もないくらい整った顔を持つ幼児。


「……どこっすか?ここ…」



…天使が、降臨なさいました。
え、なに、これは夢ですか?私目を開きながら寝てるんですか?一人暮らしも二年目となれば慣れたもので、しかし同時に色々と手を抜き始めるのもこの頃で、今日が大晦日とか関係ない、朝ご飯作るの面倒だし適当でいいや!とコンビニの菓子パンを頬張る私の目の前に突然現れた天使。
我が家はいつから天使が降臨なさるような神聖な場所になったんだ。学生にしては少し広い、でも有り触れた2LDKの部屋ですよ、ここ。
しかもなんか私、天使に睨まれてるし。何だろう、私何かしましたか?あ、もしかして宗教的な意味で男と男がアッー!な展開の本とかが駄目で私に罰を与えに来たんですか?でもごめんなさい、腐った思考はもう元に戻せないんです神様でも無理だと思われます。


…ここまでの思考、2秒。




「……あんた、なにものっすか?それに、ここは…?」



警戒心たっぷりのプリティボイスに私はハッと意識を取り戻した。…20歳にもなって何考えてるんだろう、恥ずかしい。取り敢えず、手に持っていた菓子パンを袋にしまい直してからテーブルに置き、口の中の物を咀嚼して飲み込む。夢にしては余りにもリアルな食感だ。そして、幼児の目をしっかり見る。話をする時は相手の目をちゃんと見る、これ常識。


「ここは私の部屋だけど…君こそ何者?どこから来たの?」


「……あんたの、へや?」


「そう。私が自分の部屋でご飯食べてたら、急に君が現れたの」


「…きゅうに、ぼくが……あんた、しにがみっすか?」


「は?」


「だってここ、るこんがいにはないものばっかり。だから、あんたがはなしにきいたしにがみで、ここはせいれいていなんじゃ…」



違う?と首を傾げた彼にちょっと待って、と手で制する。死神、流魂街、瀞霊廷。聞き覚えの有りすぎる言葉に口元が引き攣るのがわかった。いやだって、どう考えてもアレでしょ。卍解しちゃう名言多きオサレバトル漫画でしょ。それでいてこの状況、よく考えたら逆トリとかそういうのでしょ。いやいやいやいや非現実的過ぎるわちょっと待て、いま私リアルなん…だと…!?状態なんですけど。



「…えっと…私、一応普通の人間なんだけど…」


「にんげん!?」



目茶苦茶驚かれた。いやもう私の方がパニックだよ、何この夢小説的展開。あれでしょ、王道だとどうせこの幼児はキャラの幼少時代の姿だったりするんでしょ。




「あー…取り敢えず何となく状況がわかってきたわ」


「え!?」


「今から説明するから…あー…立ち話も何だからここに座って」




机の下に仕舞っておいた座布団を引っ張り出して示すと、幼児は警戒の色を滲ませながらも怖ず怖ずと座った。何だかとても素直だ…見た所4、5歳くらいだしキャンキャン吠えて来てもいい年頃なんだけど。ああ、訳のわからない場所だから大人しいのか、納得。そしてそこでふと思い出したように先程から気になって仕方ない事を聞いてみる。



「そういえば君、名前は?」


「……きすけ。うらはらきすけ」






…下駄帽子、お前かよ。





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