妹は、いつも突然だ。

「は?」
「だからね、クラスの子がバレー部で、もうすぐ練習試合があるんだって。でも、エースの先輩が怪我しちゃって出れなくなっちゃって戦力が落ちて困ってるって言ってたから、推薦しといたよ!」
「推薦って……誰を?」

眉間に皺を寄せながら聞き返せば、にっこりと満面の笑みで私を指差す妹。

「は?」
「つまり助っ人だよ、助っ人! 運動得意でしょ? バレーも上手いし! それに中学でも助っ人によく駆り出されてたじゃん」
「──それは…」

それは妹に一回だけだからと泣きながら頼まれたからであって、決して好きでしたわけじゃない。
さらに言えば、一回だけではなく何度も色々な部活の助っ人に駆り出されたのは全てその一回だけと言うお願いを受けたせいだ。
この学園では誰も私に助けを求める者などなくなったからその点で安堵していたというのに、なんてことをしてくれるんだ。
それに、そもそもこの学園は優秀な人材の宝庫なのだし、何故普通の人よりはいくらか上手い程度の私にそんな学園の部活の助っ人なんていう大役が出来るだろうか。
勤まるわけがないじゃないか。
まあおそらくは、中学で助っ人に駆り出されてたからという安直な理由で他には何にも考えずに私の名を出したのだろうけど……大恥をかくのは必須だ。
勘弁して欲しい。

「中学とはレベルも違うし、県では名も知れてない地元同士の学校の大会とか練習試合だから私でも助っ人が出来ただけであって、こんな有名な学園での助っ人だなんて私には無理だと思う」
「大丈夫! 大活躍間違いなしだよ!」
「……………………」

その自信は一体どこからくるんでしょうか。

「ね、お願い! 今日の放課後バレー部の練習に連れて行くってもう約束しちゃったの。ね、練習に参加してみてダメならダメで断っていいから、お願い!」
「…………………………」

約束したってこの子は…本当に勝手過ぎる。
けれど、どうにもこの小動物のようなそさは顔でお願いされると私は断れないのだ。
私は溜め息を1つ吐く。

「練習に参加して、私が使えないって分かったら友達に非難されることになるかも知れない。それでも良いわけだ?」
「うん! 大丈夫、きっと皆びっくりすると思うんだ!」
「…わかった、行くよ」
「本当!? やった、ありがとう!」
「さっさとご飯食べな。お昼休みが終わってしまう」

うん、と満面の笑みで頷いた妹は、昼食のお弁当を食べるのに口を動かし始めた。
私はといえば、今日の放課後を思うと気が重くて食欲がなくなってしまった。
妹にはああ言ったが、使えないと分かれば非難されるのは十中八九私だけだろう。
ああ、憂鬱だ。
妹に隠れて、私は溜め息を吐いた。

















(平和な学園生活は1ヶ月で幕を閉じる)





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