今までの彼には存在しなかった気持ち。
一体いつから生まれたのか分からない程自然に、彼の中で沸き起こった気持ち。
狂ったかのように暴れまわる時もあれば、胸を満たす温かさに変わる時もある。
「織姫………」
「うっっ………」
「何故泣いている。」
織姫はその質問に、目をあげる。
その涙に濡れた顔に、人知れずウルキオラは欲情してしまう。
今すぐ抱きしめてあたためてその涙を乾かしてやりたいはずなのに、
その泣き顔をまだ堪能していたい。
もっと泣かせてやりたい。
そんな歪んだ思いにウルキオラは悩み続ける。
「だって………」
「どうした?」
「あたしが取っておいたケーキを、グリムジョーが食べちゃったんだもんっっっ!!!」
織姫はそう言うと「後で食べようと大切にとっといたのに…」などと
ぶつぶつ文句を言いながら目をうるうるさせながらウルキオラを見てくる。
「食べ物ごときで。」
「食べ物ごときって何よ!ウルキオラにはたいしたことじゃなくても………あたしがどれだけ楽しみにしてたか………」
また織姫はぶつぶつグリムジョーへの不満を並べたてる。
その織姫の様子を見つめながらウルキオラの頭の中では、葛藤が続く。
文句を言う度に尖る潤った唇。
部屋着の広く開いた胸元。細い肩。
もう少し、見ていたい。
「またケーキは持って来てやる。機嫌を直せ。」
ベットに座る織姫に近づいて、頭を優しく撫でる。
その柔らかい髪の感触に、またウルキオラの中で欲望が目覚める。
(何故こんな女に……これほどの衝動が湧くのか………)
自身の中の熱さを理性では説明出来ず、ウルキオラの頭の中は混乱する。
「また持って来る、って言ったって……一体いつ持って来てくれるの?」
まだ不満げに口を尖らせる織姫の唇を見ていると、どうしようもなく我慢出来なくなり
音をたてながら軽く唇を吸い彼女の唇に重ねた。
「ちょっと………何するの……」
いっきに真っ赤になる織姫をみて、軽く微笑む。
ひとつひとつの反応が可愛くて仕方ない。
「機嫌をなおせ、織姫。」
「キスしたって無駄だからね!!!」
赤くなりながらもむきになってまくし立てる織姫。
「だから必ずまた持って来てやる、と言っている。」
「またどうせグリムジョーが食べちゃうし……」
伏し目がちになって拗ねてみせる織姫。
その様子を見て、目を細めるウルキオラ。
「俺の前で他の男の名前を何度も出すな。」
「何、それって……嫉妬?」
織姫は目を真ん丸にしてウルキオラに問いかける。
その口許から、笑い声がもれる。
「何がおかしい。」
「ウルキオラも嫉妬するんだなぁって。」
笑顔を向ける織姫。
「でもちょっと嬉しいや……。ウルキオラがやきもち焼くなんて。」
「お前は何も分かってない。」
「えっ……?」
織姫が可愛い反応を見せれば見せるほど、ウルキオラの中で織姫を壊したいという気持ちが高まるということを。
「分かってないって………。あれっ?なんか話反らしてない?あたしはケーキの話をしてたんだった!!」
織姫は上手く話を違うところに持ってかれた、と言わんばかりにウルキオラを不満たっぷりに見つめた。
「だから、また持って来てやると言っている。」
「本当…?」
「あぁ。今度は二人きりの時に。」
「……?」
「何故なら俺も食べたいからな。」
「えっ?」
そのまま織姫をソファーに押し倒し、優しくおでこにキスする。
戸惑ったように更に赤く染まる顔に、ウルキオラの中で今までおさえていた何かが外れる。
「ケーキを食べた後のお前はさぞ甘い味がするんだろう。」
「んっ…?」
今度は深く深く口づけを交わし舌を絡ませながら。
(今でも十分甘いが…)
ウルキオラは内心そう思いながら織姫の甘い身体を、十分に堪能した。
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