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仕事がない。びっくりするほど少ない。暇を持て余すも今までこんなことは無かったので、実は暗殺業って暇だったんだなあと実感しひたすらぼんやりと過ごす中で私は唯一浮いていた。そりゃあそうだ。私は常に部屋の隅でじっとしているだけで、他のメンバーは色々話したり飲み食いをしたりと交流を深めている。
リゾットさん、もといリーダーのヘッドハンティングした人物たちは今や4人に増えた。1ヶ月で4名も集まり、仕事に関しては取りこぼしもあったりするがきっちり回収していくチームワークを見せる。リーダーは優秀なんだろうな、とわかる人材だ。一番初めに入ってきたのはプロシュートという美しい金の髪を持つイケメン、同じタイミングで黒髪につり目が特徴のソルベ。そしてそれから1週間後にはジェラートという少し胡散臭い見た目をした男が来て、その5日後にはホルマジオというファッションセンスが奇抜な男が来た。スタンドはそれぞれ持っていて、暗殺向き。
皆一応私に話しかけるが、私がほぼ話さないのを見て空気と扱う。唯一未だに話しかけてくるのはリーダーくらいだ。
リーダーは、いい人だ。毎回断られるとわかっていても私に昼食の誘いをかけてくれる。別にギャングにならずとも生きていけそうだが、色々事情があるのだろう。仕事ぶりを見ていると暗殺よりも秘書とかの方が向いていそうな気もする。
ところで話は戻るが、ここ1ヶ月でメンバーは私を含め6人に増えた。ついでに気づいたらソルベとジェラートは常に一緒にいる。多分そっちの人なんだろうと思う。それはまあどうでもいいとして、仕事がないのだ。多分遂行した数は1週間に1回くらい。おじさんのところでは少なくて週1、多くて毎晩殺してたからあまりの仕事の無さに酷く驚いた。おじさんが殺しまくっていたのか、ボスの心が寛大なのか。仕事が無いとき、他の人たちは携帯があるし各々出かけたり好きなことをしている。しかし私はアジトにいなければいけない。でも、私に暇の潰し方なんてわからないのだ。今まで暇になったことなんて無かった。そのためぼんやりと考えることが多くなった。時間も出来たし、今は前のように常に殴られたり殺されかけたりすることもない。多分、心に余裕が出来たんだと思う。だから、私はこの先のことを考えてみた。

今が何年か知らないが、子供の身は成長する。人殺しを犯し平然とギャングとして生きているが、その根っこは超平和国のくせが抜けない。大人になったら、ギャングは抜けようかと思っている。それがいつになるかわからないが、日本へ行きたい。私がどうなっているかわからないし、家だってあるのか怪しいけどそれでも、日本へ帰りたい。でも、日本で生きていけるかと聞かれるとわからない。多分私はもう戻れないところまで来ているから、ズコズコと帰ってくる気がする。それできっと母親だという人と同じように娼婦になって死んでいく。もしくは暗殺した恨みを買って殺されるかも。それはそれで仕方が無い。日本へ行くだけで私の心は満たされるはずだ、あとは生きようが死のうが関係ないと思う。あ、でももしかしたら逮捕されるかも。終身刑とか死刑とか。真っ当になれるか怪しいけど、罪を償うのは大切だ。自分でも思うくらい小さな体の十字架は重い。

「ナマエ、ポルポが呼んでいる」

夕方になり風がひんやりしてきた頃、リーダーが私の目を見て言った。ポルポ。誰だっけなあ、と頭の中で検索をしてデブにたどりついた。一つ頷いて部屋を出る。道わからないから、一旦家を経由してから行けばいいだろう、と思っているとホルマジオがやってきた。

「車で送ってってやるよ」
「あ?出んのかホルマジオ、ついでにタバコも買ってこい」
「へいへい」

私にニッと笑いかけ部屋を出るホルマジオに戸惑いながらリーダーの顔を見ると、リーダーは頷いた。行けと。ホルマジオの短い赤毛を追いかけた。
ホルマジオは助手席に私を乗せると車を走らせた。タバコを片手にちょいちょいすれ違うお姉さんを選定している。タバコはよくわからないが、おじさんが吸っていたのと違い微妙な匂いだった。

「おめえよォ、なんでギャングになったんだ?」

なんで、と聞かれても困る。生きるため?生活するため?多分どれも違う。というより気づけばギャングだったから、理由なんて無い。

「……別にとやかく言うつもりはねえけど、ちったあ心開いてもいいんじゃあねえか?そんなんでチームやっていけねえぞ」

その言葉に一瞬呼吸が詰まる。心を開くってなんだ。私は心を閉ざした覚えなんて無い。ホルマジオを見ると、彼はどうでも良さげな目で前を見ている。コミュニケーションの話か?そう言われてもわからない。話しかける?なんて?話題も何も無いし、そもそもイタリア語があんまり話せない。勉強しろと? ……イタリア語教室でも通うか?お金の無駄になりそうだ。
脳内で少しあわあわとしていると車は覚えのある建物の前で止まった。久々だよここ。ホルマジオはわざわざドアを開けて私をエスコートよろしく降ろした。

「気をつけろよシニョリーナ」

これは、ホルマジオの優しさなんだろうか。優しさなんだろうな。なら単純に私も返すべき?

「グラーツェ」

結構ボンジョルノとかグラーツェとかは言っているが、このときの言葉は何か違った。



「ナマエ、暗殺チームはどうだね?仕事は順調か?」

遂行は順調だけど、数が少ない。それを知らないだろうデブは満足そうに笑いながら私に羽振りよくステーキを奢る。ソースがちょっと辛いが美味しい。つーか笑うなってば、机が揺れる。

「リゾットがヘッドハンティングしたメンバーが増えたようだが、お子ちゃまには辛いんじゃあないかと思ってな。仕事を紹介してやろう」

デブがそういうと、横から黒スーツの男が来て私に書類を渡した。なんて書いてあるかわからない。ちらりと顔だけ見てまた肉に集中すると、デブはフン、と鼻を鳴らして愚痴を言い始めた。多分この人のことなんだろう。事業を邪魔するとかなんとか、麻薬関係らしい。見たところまだ若そうだけど。

「今夜遂行しろ、報酬は私直々だからな、弾んでやる。ああ、何故自分がという顔だな?そいつは子供に甘いんだ。守るべき対象だと抜かしてやがる、甘ちゃんに現実を見せてやるのは大事だとは思わんかね?」

なるほど、よくあるパターン。デブは残虐に殺せ、と言った。残虐と言われても困る。今夜の動きは割れているようで、場所も指定された。終わったらそのまま帰っていいらしい。デブの話はそのままその人の悪口へと変わり、更に他のギャングの悪口へと変わった。こいつが太る理由ストレスなの?
お腹も満タンになり現場へ向かうと、写真よりも若い男の人が酒場から出てきて機嫌良さそうに歩いていた。路地裏に入ったところで後ろから追いかける。わざと足音を立てて走れば、その人はすぐにこちらを向いた。

「おや、どうしたんだい小さなシニョリーナ。こんな時間に外へ出ていては天使に攫われてしまうよ、お家はどこ?私が送っていこう!」

にこにことアルコール臭い息で話し私の頭を撫でる。
誰もいないことをゲンさんを通して確認し、私はその手を跳ねた。叫び声が出る前に声帯を狙ってナイフを刺し、その後四肢を切断していく。ちょっとしんどい作業だが、残虐ってこんな感じだろうと昔読んだ有名な小説の内容を思い出しやってみる。思ったより血の量が凄く、服がダメになってしまった。いくらするんだろう、とよく分かっていないお金に不安になっていると翌日、デブは上機嫌に私を呼び出し服をくれて昼食はフルコース出された。食べきれなくて結構残した。

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