17

じっと視線を感じる。リーダーに言われ、おとなしくベッドに横になってはいるが、すごく視線を感じる。ちらりと隣を見ると、ゲンさんが私を見ている。そして、目線だけを横にやると、マスクを着けていない素顔のメローネがクッションの山に体を預けながらもじっと私を見ている。……出て行ってくれないかな。監視だからダメなのかもしれない。私はおとなしく背を向けるよう寝返りを打った。背後から刺されそうになってもゲンさんがいるから大丈夫だ。

栄養失調と風邪、リーダーはそう言い、ソルベが私に栄養剤の点滴を打った。もうかさぶたになっているが、少しチクッとしたあの痛みが久々で唇の裏を噛んだらジェラートに「まだまだ子供だなあ」と笑われたことがすごくムカついた。……べつに、それはいい。
私は動揺している、とてもしている。だって、ギアッチョが私を心配して夜中にリーダーのところに駆け込んだのだと、ジェラート曰く「あんなに必死なギアッチョは初めて見た」のだと。……確かにギアッチョは最初公園で寝る私をわざわざ迎えに来た。私に食事をくれて、金銭感覚を指摘してくれて、それからは放っておかれたけどそれでも家に置いてくれた。でも、どうして、私は自ら公園に向かったし、ギアッチョには何も伝えていない。置き手紙も無しにギアッチョはどうして公園まで来たんだろう、公園に用があったわけでもあるまいし………まさか、………いいや、それは違う。ふと出てきた案に頭を振って布団を頭から被る。暗殺者なのに身体管理が出来ていないなんて恥だ。
しばらくそう纏まりきらない考えを隅にやり自分を責めていると、のそりとベッドのふちに何かが乗りそちらに沈む。頭側の布団を剥がされた。

「なーにしてんだバンビーナ。……おいメローネ、お前普通にこえーから」
「うるさい」
「ナマエがゆっくり休めねえだろうが。大丈夫か、ジェラート買ってきたぜ、食えよ」

そう言ってホルマジオが私の脇に手を入れ持ち上げる。視点が高くなり、呆然と床を見下ろした。………これは、抱っこ? 初めてのことにどうすればわからず固まっていると、ホルマジオは「大人しくしてろよ」と言い私を抱えたまま部屋を出る。えっ。ホルマジオの肩越しに後ろを見ると、メローネが私を凝視したまま着いてきている。……えっ。ホルマジオはすたすたとアジトのリビングに向かう。その横顔を見ると「チョコラートは譲ってやるよ」と言う。そもそも私はジェラートを食べるとは言っていないし、それに、どうして……こんな。わからない。私が混乱して自分の状況についていけていない間にもホルマジオはリビングのドアを開けソファに私を降ろす。リビングには当然他のメンバー他のメンバー…イルーゾォとプロシュートがおり、プロシュートの隣にはメローネが座った。私はと言うと空いているソファに降ろされて、隣には当然のようにホルマジオが座る。更に機を見計らったようにリーダーがキッチンからジェラートの入った器を人数分持ってきた。……譲るも何も、種類はチョコしかない。

「部屋に持っていこうと思っていたんだが」
「もう熱だって大したことねーんだろ、いいじゃあねーか」
「メローネにガン見されてちゃジェラートだって美味くねえだろ」
「……ガン見?メローネ、何をしていた?」
「別に?ただ言われたまま見てただけだぜ」
「ガン見しろと言った覚えはねえが」

やはりメローネは監視だったらしい。確かに監視にしてはあからさまだ、リーダーがメローネにため息をついた。

「ほれ、あーん」
「………………」

しかしリーダーとメローネのやり取りはそっちのけで私の意識はホルマジオとジェラートに向いていた。……何?何をしてる?あーんって、今ホルマジオは私にあーんって言った?その私に向けたスプーンは何?信じられぬままスプーンとホルマジオを何度も見比べていると、「いいから食えよ」とついには無理やり口に突っ込まれた。口の中にチョコの匂いが広がり、舌の上で冷たいものがひんやりと溶けていく。

「美味いか?」

ホルマジオに聞かれ、なんとも複雑に微妙な顔をしながらもジェラートに罪は無いので素直に頷く。と、ホルマジオは一瞬驚いたように目を見張り、そしてにかっと笑った。

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