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ギアッチョが帰ってこないなあ。朝ごはんのサンドイッチの1/4を齧り首を傾げる。この家を捨ててしまったんだろうか。だとしたら、私は出て行った方がいいのかな。そんなことを考えながら咀嚼し飲み込む。ゲンさんが空っぽになったスッコダランチャの入れ物を寂しそうにつついている。好きなのかな、昨日はいい報酬だったから買ってあげようかな。
扉の鍵を閉めて外に出ると、雨がザアアと降っていた。粒が細く緩やかに地面をタップしていく。どうせ誰もいないからいいや、とゲンさんに頼み傘を出してもらう。シンプルな藍色の傘は私の体には少し大きいようだが、あまり濡れないのでよしとする。アジトへの道をぴちゃぴちゃ歩きながら、昨日ぶちゃらてぃと別れた通りへ出た。この時間帯はいつもどのお店もシャッターが降りている。通りに人も滅多にいない。しかし、今日はただ1人、黒い無地の傘を差して佇む少年がいた。昨日も見た顔だ。驚き立ち止まると、ぶちゃらてぃは跫で気づいたようで私を見た。

「ボンジョルノ、ナマエ」
「……ボンジョルノ」

ぶちゃらてぃはそのまま当たり前のように私についてくる。通りを曲がるところで、気づいた。連れていってもいいのか?いいや、だめだろう。だってアジトは誰にも言ってはいけない、たとえ仲間だと言っても裏切る可能性は強いし、それに私たちは暗殺専門だ。たぶん、あのデブは私にぶちゃらてぃと暗殺者として育てろなんて言っていない。暗殺者は育てるまでもなく暗殺者のはずだ、施設にいれてしまえばいいもん。私への遊びか、ぶちゃらてぃへの嫌がらせだろう。立ち止まった私を不思議そうに見ながら一緒に立ち止まるおかっぱ頭を見上げて、どうしようかなあと首を傾げる。ぶちゃらてぃも首を傾げた。
それから数分立ち止まって考えた結果、私はぶちゃらてぃをアジトに連れて行かないことにした。何かあってぶちゃらてぃが殺されてしまうと案内人もいなくなってしまう。それは困る。しかし無断欠勤というのもなあ、と考えて、私はゲンさんに伝言をお願いすることにした。

「ゲンさん」

ふわりと出てきたゲンさんに、ぶちゃらてぃは息を飲んだ。ぶちゃらてぃもスタンドが使えるらしい。どんなスタンドなんだろう。
ゲンさんに今日は休む、という旨を伝えてとお願いすると、ゲンさんは一つ頷きするすると飛んでいく。日本語で言っているから、ぶちゃらてぃにはきっと分からないだろう。ところでゲンさんは喋れるのだろうか。……今更わからないけど、なんとかなるだろう。

「あの、今のは、」
「スタンド」

さて、アジトに行かないのならどうすればいいんだろう。私にはアジトにいて仕事が来るまで待つか、デブに呼ばれるかのどちらかしかない。そういえば、アジトのみんなはいつもどうしてるんだろう。個人の仕事を受けているのかもしれない。しかし私に個人の仕事を頼む人はデブくらいしかいないし……デブのところに行くか。仕事がなかったら今日は時間が過ぎるのを待つしかない。そう思っていたら、デブのところに行くと「ああ、丁度呼ぼうとしていた。いい子だ、ナマエ」と言われた。皮がパリパリして中にクリームが挟んである甘いお菓子をもらい、仕事ももらった。しかしまた書類は文字しかない。ベタベタになった手を舐めて、書類をぶちゃらてぃに投げる。その様子に、デブは気持ち悪い顔で笑っていた。

今日の仕事はなんちゃら広場らしい。またぶちゃらてぃに連れていってもらい、噴水のところに座る。時間は昼過ぎらしい。バレないように殺るのは面倒だ。隣にぶちゃらてぃが座る。

「……お腹すきませんか?」

ぶちゃらてぃは空いたのかもしれない。食べたいなら食べていいのに。そう思ったところで気がついた。もしかして、こういう見習い相手は上司が払うべきなのか。そうか、そういうことなのか。昨日の報酬分があるから大丈夫だ、よし。私はお金を出し、少し多めにぶちゃらてぃに差し出した。好きなもの食べてきていいよ。あんまり高いのは食べれないだろうけど。ぶちゃらてぃは神妙な顔をして私からお金を受け取る。そんなに真剣にならなくても、……もしかして、ぶちゃらてぃも貧乏なのかもしれない。確かに、うちみたいに全然仕事が回ってこなくて貧乏なチームがあるわけだし…つまりデブは横領しているのか。なんてことだ。私はとんでもない真実に気づいてしまった。

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