- ナノ -

双子にキスしないと出られない部屋

『退出条件:キス』

でかでかと書かれた張り紙に絶句したのは他でもない………双子だ。双子ってあれね、ロンのお兄さんのね、やんちゃなあの子たちね。もちろん私だって驚いたが、双子はそれ以上に驚き悲鳴をあげ腰を抜かしてたからそうでもないっていう。自分より怒ってる人がいるとスッ…と感情が落ち着くアレと一緒。んなことはどうでもいいのさ。そう、キスだよ。お魚ではないほうのキスだ。無論問題はあるが、紙の指示に従わねばここからは出られない。このパンドラの箱ならぬDADAの教室にあった謎の箱からは──な!

遡ること数時間前、私は罰則でトロフィーを磨いていた。教師陣もそろそろネタ切れなのか磨くのは今週3回目、トロフィーもかなりピカピカになってきたぞと胸を張ったあたりで時間は夕暮れ、フィルチさんの廊下で魔法云々の叫び声をバックに寮に戻ろうとしていた私は唐突に階段横から飛んできた双子と衝突事故を起こしあわや階段から転倒の危機!しかし双子は例の危険スポーツの選手でもありそのあたりは信用が出来た……そう、双子はなんと箒に乗っていたのである!フィルチおじさんに見つかったらぶっ叩かれる暴挙らしい。よくわからんが、フィルチさんから逃げていた双子はついでに私を捕まえて逃げる逃げる逃げる。私は箒の恐怖アンド酔いと戦っていた。マジで怖かった。そうして箒ごと逃げのびた先はたまたま空いていたDADAの教室。シュパンと急降下して箒が着地、私が安堵で転げ石の床に縋り付く間に双子は教卓においてあった謎の箱を見つけパカッと開けてしまった。そして気づけば私たち3人は狭い箱庭のような空間に閉じ込められており、話は冒頭に戻るのであーる。回想終わり!

「き、きす、って、」
「ジョージ、顔が髪と同じくらい赤いぜ?照れてんのか」
「お前もだろ!」
「早く終わらせて帰ろうよ」
「「どうしてナマエが一番冷静なんだ!?」」

おお息ぴったり。思わずパチパチと拍手をすると片方にそっと手を抑えられた。そしてじっと見つめられる。これは……どっちだ?ジョージ?

「ナマエ……」
「どおおい待て!バカ!ふざけんなよ!バカ!」
「語彙力ウケる」

ケラケラと笑い漫才のようなやりとりをする双子を見る。話を聞く限り先程私の手をとったのはジョージであっていたようだ。本当に双子って見た目わからないよね。パーバティも双子らしいけど他寮だっていうからほっとしたものだ。制服の色一緒だったら確実にわからんと胸を張って言える。つまりウィーズリー兄弟の見分けが全くついてないまま歳を重ねています。毎日見ててもぜんっぜんわからん。それよりも、だ。

「はい漫才そこまでー。じゃ、ほら、ちゃっちゃとやって、ちゃっちゃと帰ろう」
「だっ、ばっ、う〜〜!」
「ナマエ!?俺たちはお前のハッキリしたところは好きだが潔すぎやしないか!?」
「もっと自分を大切にしろ!」
「世界一大切にしてますけど!?」

まるで私が悪いみたいな……えっなんで……?心外だ。眉を寄せてムッと頭上のそっくり顔を見た。2人は揃って同じ顔だし、同様に頬が赤く染っていた。そんなに恥ずかしいもんか?じっと見ると、2人の顔はさらに赤くなった。ボンッと音を立てて爆発しそうだ。ちょっと面白いな。

「……い、いいの、か?」

片方が少し掠れた声で言う。もう片方が片方の肩をバシッと……言いにくいな。仮ジョージが仮フレッドの肩をバシッと叩いた。そしてそのまま肩を組みなにやらこしょこしょ話をし始める。何してんだか。少しして、2人はお互いの肩をドンッと叩きあった後こちらを向いてにっかりと笑った。さっきすげえ打撲音だったけど大丈夫なん?

「なんでにじりよってくんの?」
「だっていいんだろ?」
「なにが!?」

背の高い2人がじりじりとこちらへ来る。な、なんだか圧を感じるんだぞ…!こわ!寄られる分だけ後退していくと、そのうちトンッと背中に壁が当たった。そして壁に2人の手が当てられる。壁ドゥンってやつか、まて、まてまてまて、なんでこうなってるんだ。降参するように両手を顔の横まで上げた。

「き、君たちでちゅーすれば終わるんじゃないの!?」
「……は?」
「本気で言ってるのか?」

真顔こわいです。冷や汗が流れる。あうう。どうして急に声が低くなったのか。

「ナマエ、よく考えるんだ。俺たちだけならまだしも、お前もいるんだぞ」
「そうだとも、つまり君もカウントされているってわけだ」
「うそん」
「というわけで」
「は? ───な、ぬッ!?」

ちゅ、というむず痒い音がして、両頬に柔らかい熱が当たる。ビシリと硬直した。な、なななな、なななな───!!?

「さて、俺らはしたからな」
「次はナマエの番だろ」
「あばばばばば」

酸素を求める魚みたくぱくぱくと口を開閉する。う、うそやろ、あば、ウェッ。顔の横にあげていた手をそのまま頬にぺたりと当てる。あ、熱い、な……。2人を見上げると、同じ顔がニヤニヤと笑っていた。う、ううう、うううう。悔しい…ッ、しかし負けてられるか!ぐっと握りこぶしを作る。お、女は度胸!

「っしゃオラこいや!」
「えっ」
「待ておいナマエ……ッ!?」

手を2人の首裏へ回し、そのままぐっと私の方へ寄せる。驚いた2人の顔に少しスッキリした。んでもって、がちんっと歯が当たり3人とも口を抑えた。オチがこれかい。しかし、ぐるりと視界が回って、次に目を開けたときはDADAの教室だった。だーいせーいこーう!ルーピン教授が目を丸くして、床に倒れ込む私たちを見ていた。

「この箱を開けたのは君たち?……大丈夫かい?」
「だ、大丈夫ッス!ウス!」

ルーピン教授曰く、謎の箱は最近ゾンコに入荷した悪戯グッズらしい。面白い魔法がかかっているから授業で扱おうと思ったんだとか。絶対にやめてくれと懇願し、私は髪と同じくらい赤い顔をした双子を置いて寮へと退散したのであった。逃げるが勝ち!