- ナノ -

どちらかをくすぐらないと出られない部屋

頭がお説教で詰まってしまい頭痛がする。マクゴナガル先生のお説教は長かった…。ここ数ヶ月であまりにも私が魔法薬学で鍋を壊し続けているからスネイプ先生はマクゴナガル先生にチクチク言ったらしい。やらしい方法の嫌味をマクゴナガル先生と私に向けてきよった。で、さすがの量にマクゴナガル先生もびっくりしてお説教をいただいてしまった。鍋をどんどん無駄にしてるのは申し訳ないと思っている分だけにグサグサ刺さりまくった小1時間が終わり、お腹空いたのと心身ともに疲れたのとでふらふらと歩く。寮についたらご飯がある、ご飯が待ってる、天使ハーミーがとってくれているご飯がまってるぅぅう……。
ガタガタッ、ドン!

「うわっ」

階段に置いていかれる前に乗れそうだったとき、突然廊下の向こうからなにやら物音が聞こえた。なんぞ。当たりが暗いぶんびくっとしてしまったが、これがいつものピーブズだったらかっこ悪いことこの上ない。しかし物音は気になる。蛇でもいるんじゃないだろうな。一応魔法使いらしく杖を構えてみる。多分蛇とかいたら杖なんか放り出して逃げる。……あっ階段行っちゃった!ふむ……仕方あるまい、私は物音の行方を追って廊下の方に進んだ。

「……ここ?」

ガタ、だのゴトゴトだのと聞こえていた場所には、なにやらでっかい倉庫らしき扉があった。ちょっと古ぼけて、壁とは色の違う分厚そうな、ところどころ傷のついた扉の奥からまたバタン、ガタンと音が聞こえた。中で一体何が……。扉に耳をつけて中の様子を聞いてみる。「……れか、だ……か!……せん……!た……けて!」

「もしかしてピンチ?」

聞こえてくる声の端々が強い、もしやこれは人を呼んでいる救援じゃないか?私は扉を杖で叩いた。カンカンッと音がした。

「誰かいますか!閉じ込められてたりしますか!」
「…こ……る!……せん……よん…!」
「やっべ何言ってるか全然聞こえねえ、ってウオォ!?」

ドン、突然扉が内側に開き、半分体重を預けていただけに前のめりで部屋に入ってしまう。顔面を床にごつんっと打った。顔面からダイブした。すごく痛むおでこを抑え起き上がると、びっくりした顔の男の子……男の人?がいた。ネクタイは黄色、ってことは、アー、えーと……ハッフルパフ!ハッフルパフの、多分上級生だ。なんか体でかいし。ハッフルパフの上級生(仮)はしっかりした手を差し出し、私を起こしてくれた。お、おお、あざっす。

「君は……あっ!」
「えっ!?」
「扉が!」

ハッフルパフの上級生(仮)の声に、私も後ろを見る。あの扉は閉まっていた。ハッフルパフの上級生(仮)は「ああ…まただ…」と絶望したような声で頭を抱えてしまった。えっなに。何があるんですか。

「開かないんだ、あの扉…僕はもうだめだと思って、でも君が来てくれて……でももう本当にだめだ……」
「えー?ははは、何いってんすか、開かない扉って、私はあそこから入ってき……ん?あれ?」

んなわけない、と笑いながら扉に近づくと、そういえば気づかなかったことがあった。今気づいた。

「これドアノブなくね?」
「壊れてるみたいで」
「なん…だと……」

真っ平らな板をはめ込んだような扉は、体当たりをしても動くことなく、ならば横かとスライドさせようにも動かない。そういや内開きで私がこの部屋に顔面からこんにちはしたんだっけ。……内開きにはぁ、ドアノブが、必要だねえ……?
まさかそんなことってあるか、学校で閉じ込められて餓死?衰弱死?おいおい魔法界冗談じゃねえぞ。べたべたと扉をひたすら触りどこかに隙間がないか確認していると、ド真ん中にアパートとかによくある細長い穴を見つけた。

「……あれ?この穴なんだろう」
「…穴?」
「ほら、ここに郵便受けみたいな細い穴が……」

ずるり。穴から紙が出てきて、ヒョゥワ!?と奇声をあげてしまった。な、なに、手紙?お手紙なの?……外から見た扉はどこにもそんな穴無かったような。どういう仕組みなの。
ハッフルパフの上級生(仮)が折りたたまれた紙を開く。

「どちらかをくすぐらないと出れない部屋?」

なんだそれ。お互い腑に落ちない表情で目が合う。くすぐるってあれ?コショコショ?それやったら出れんの?マジで言ってる?マジでどういう仕組みだ。
妙な仕掛け部屋もあるとかレジャーランドホグワーツじゃないか。上着を脱いで腕まくりをする。

「仕方ない……任せろ」

「えっ!?いや、まっ、うわあっ、ふ、ふふ、……はぁっ、やめ、あははははは」

このあとめちゃくちゃくすぐった。




「は、はぁ、はぁ、ぁ……」
「何エロい声出してんすかやめてクダサイ」
「君のせいじゃないか!」

笑いまくってふらふらにうずくまったハッフルパフの上級生(仮)を横目に扉をぐいぐい押す。

「開かねえじゃねえか!ふざけんな!……あいった!」

げしっと扉を蹴る。小指が変な方向にぶつかり、嫌な音を立てた。足が重症。かわいいかわいいマイピンキー(足)を押さえてうずくまる。ふぅぅういってえええ。

「……その扉、内開きじゃなかった?」
「アッ」

そういやそうだった。ドジっ子属性は所持してないけど発動しちゃったみたい。……あれ?

「ドアノブないのに内開き?」
「…………」

ぎぎぎ、オイルの足りない錆びた蝶番のように首を傾げる。ハッフルパフの上級生(仮)も無言で俯いた。どうしろっていうんだ!