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酷い。これは酷い。すごい勢いで減っていく寮点に申し訳ねえと頭を抱える。これほぼ私なんだよなあ…私がハリーにわざわざ嫌味を言ってくる奴を片っ端から追い払っていった結果なんだよなあ……。奴等揃いも揃ってスネイプ先生のところに行くもんだからゴリゴリ減っていく。流石に見かねたのかマクゴナガル先生はハーミーへ入れる点数を普段より少しばかし多めにしてくれているが、依然と出ていくほうが多い。唯一の希望は私がファイトしているときに通りかかったらやべえおじさんが毎度点をくれることくらいだ。まあ点くれても後に減るんだけど。希望は気のせいだった。あとあのやべえおじさんは私の勇気だとか強さだとか手腕だとかぺらぺらと似合わないことを言っているが、すごく楽しそうなので明らかに娯楽の一つとして見られている気がしてならない。特にダムストランクのでかい奴等相手にしたときなんて超楽しそう。あの人絶対ダムストランクとなんかあるんだぜ、ひゅー、怪しー。

「しかし…減らした方がいいよな……」
「何を?」
「寮点」
「!? これ以上減らさないでちょうだい!」
「!? 違います、寮点を減らされる回数を減ら……あれ?なんだっけ?寮点を、減らすのを減ら……?」
「…………大体理解したわ」

重複して自分でも混乱してしまったが、ハーミーは流石才女というだけあって理解してくれたらしい。よかった。ハーミーは「そうね、そうして。いい加減これ以上減るのは嫌なの、ねえハリー」「うーん、ナマエが僕のために怒ってくれるのは嬉しいけど、ちょっとお休みしててもいいかも」「だそうだから、あなた少しは落ち着いて。ハリーよりピリピリしてるんだもの」いやそんなことはない。別にピリピリはしてないし、ハリーだってそんなピリピリしてるようにも見えないぞ。ピリピリしてるのはあれだ、ハッフルパフの人たちだ。あれはピリピリを越えてビリビリしてる。

「ねえナマエ、呼び寄せ呪文の練習一緒にやろうよ」
「……ハリー、ナマエを相手に選ぶのはちょっとどうなのかしら」
「んん!?ハーミー!?」

いやまあ事実だけど!多分足を引っ張るだけなんだけど!キッパリ言いますね!?

「でも一緒にやりたいんだ。見てるだけでもいい、いいでしょ?」
「そうね、きっとハリーの方が先に出来るから、ナマエに教えてあげてね」

事実だけど。事実だけどさ。ハリーはうん、と頷き、行こう、とどこかご機嫌よさそうに私の手を引いた。




まぁたゴリゴリ減るかな…とハリーに手を引かれながも憂鬱な気分でついた地下室は今日も寒い。石油ストーブでもいいから入れて欲しい。いややっぱ待って、石油ストーブは地下は危険だから電気ストーブにして。

「何?出待ち?アイドル?」
「バカなこと言わないで。──あれは、何かしら?」
「S.P.E.Wのバッヂじゃないの?」
「違うわ、スリザリンは相手にしてないもの」

何故かスリザリン生は教室に入らず、ぞろりと廊下に立っていた。なにしてんだ、と不審に思いながら近寄ると、生徒達の胸には、赤い謎のバッヂがあった。緑に赤ってクリスマスカラーですね。

「……なんて書いてある?」
「セドリック・ディゴリーを、応援しよう……?気味が悪いわ」

小声でハーミーに聞けば、ハーミーは眉間に皺を寄せて言う。ハッフルパフの応援なら黄色いバッヂの方がいいんじゃないの?その疑問はマルフォイくんが解明してくれた。

「気に入ったかい?」
「マルフォイ」
「これだけじゃないぞ」

スリザリン軍団を代表してマルフォイくんが出てくる。バッヂ押すような仕草をすると、バッヂの色が変わった。

「汚いぞ、ポッター!」

マルフォイくんがそう言うと、他のスリザリン生もゲラゲラと笑いバッヂの色を変えていく。バッヂの色は緑に変わっていた。つまりハッフルパフ要素はない。こいつら、初めからハッフルパフ応援する気なんて更々ないぞ。はなっからハリーいびりが目的だぞ。セドリック・ディゴリーさんはスリザリンに対して怒っていいレベル。
スリザリン生たちはバッヂを光らせながらハリーを、ひいては私たちを囲んでくる。怖いんですけど。そしてイライラする。マルフォイくんのお付のちょっと頭が残念そうな子の胸のバッヂをポチポチ連打すると、バッヂの色はピカピカと変わりクリスマスイルミネーションみたいになった。あっ面白い。ムカつくけど面白い。

「何をしてるんだ!やめろ!」
「あっ、面白かったのに」
「お前も拒否しろゴイル!」
「そうね、面白いわ。それにとってもオシャレね」

俯くハリーを庇うようにハーミーが立ち、猿にもわかるわかりやすい皮肉が最後までたっぷりなセリフを言った。なんてイケメンなんだ。それに対して私は…。振り払われた手をもう一度上げてみる。ゴイルという子が身構えた。あっ、これも面白いぞ。
私がゴイルくんの反応で遊んでいると、マルフォイくんがハーミーに一つあげようか?と珍しいがタイミングはここじゃない優しさを見せた。にっこりとこれまたタイミングはここじゃないスマイルを見せる。

「たくさんあるんだ。でも僕の手に触らないでくれよ、手を洗ったばかりでね。穢れた血でべったり汚されなくないんだ」

「……あんだって?」

カーンカーンカーン。私の中でゴングが鳴った。ファイッ。

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