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腕を掴まれ、引っ張られるままに足がもつれながらも大広間を出てしまった。あーれー。ごめんハリー、見れないかも。あとでダイジェストで活躍したとこ教えてね。
すごく急ぐハーミーの後ろをハアハアと着いていき、図書館に入ると人っ子1人いなかった。そりゃそうだ、なんてったって人気のスポーツ。もちろん司書さんはいた。しかしハーミーは司書さんに軽く挨拶すると、奥の方へ行く。棚に並ぶ文字は……Magical creatures?なんで?

「あったわ。ナマエ、これを見て。……ほら、やっぱりそうよ」
「ア、アー……バ、バシリスク?」
「バジリスク、よ。ほら、ここ」

大きな図鑑のような本の開かれたところには、でっかい蛇のような恐竜のような深海生物にいそうな顔の生物が書かれており、だだーっと説明みたいな文字が並んでいた。文字ばっかかよ。えーと、バジリスクとは古代より存在し、強大な力を有している大変危険な生物である。毒蛇の王とも言われ恐ろしい程の魔力を体内に宿しており危険度はXXXXX、到底我々が立ち向かえる相手ではあらず、また歯向かうことは大変馬鹿げている行為といえよう。

「……長い」
「もう、しょうがないわね。ほら、ここよここ!書いてあるでしょう?」
「えー?なになに、バジリスクの目を見ると…………は!?死ぬの!?」
「声が大きいわ!」

この本いわく、バジリスクの強力な魔力はバジリスクの身を外部から守り君臨するためのもので、その魔力はバジリスクの目に集中しているらしい。そのため目を見るとその魔力は目から目へと容易に我々の体内に侵入し、その速度は1秒にも満たない。つまり私たちはバジリスクの目を見ると一瞬で死亡。

「でも、ほら、ここも見てちょうだい」
「ふむ」

しかし魔力はマグルの物理学にも適用され、鏡等を介すると強大な魔力は対象物に当たり散乱する。散乱した魔力は更に目に入る可能性が大変低くなるが、散乱した魔力は同様に体へ当たる。皮膚からじわじわと魔力は侵入し、体内の細胞を変化させていき、結果標的者は石となることが確認されているが、残念ながら過去に石となった者がその後どうなったかは不明である。そのため、皮膚から侵入する魔力は微量だが、命を守るかどうかは未だ解明されていない。

「…………えらいマグル的だな」
「そもそも魔法に理論があるんだから、マグルと似ている部分は多くあるのよ。それにしたってこの本は素晴らしいわ、私すごく理解したもの」
「つまり?」
「つまり、秘密の部屋の怪物はこれでしょう?」

声を潜めたハーミーの言葉に、ゴクリと生唾を飲んだ。パンばっか食べてたからかな、口の中がカラッカラだ。

「今までの犠牲者たちが石になっていたのはとても幸運なことよ。なんらかの形で何かを介してーーそうよ!水だわ!」
「水?」
「覚えているでしょう?ミセスノリスを発見したとき、床には水が広がっていたわ。きっとミセスノリスは水の表面を介してバジリスクを見たのよ!」
「そういえば……。でも、水がそんな丁度良く溢れてるもん?」
「それもそうね……」

ハーミーは少し考えると、またハッと顔を上げた。バジリスクの絵も珍妙だなこれと思いながら見ていた私の肩をいつぞやの勢いでガッと掴む。

「水道管よ!」
「水道管?」
「ええ、水道管!水は水道管から出ているんだわ。そうすれば、ハリーが色々な場所で声を聞くのも合点がいくし、先生方が見つけられないのもわかるもの!それに、蛇なら通れるし、きっと秘密の部屋には水道管があるのよ」

これまたなんとも不思議な答えだ。ふむ、と少し考えてみる。水道管があるとして、私にはこちらの水道管が想像つかないが大体日本と同じだろう。とすると、入口はどこかの端か、もしくはどこか破損して漏れているか。でも水道に関しての問題は噂では聞かないし、水道が通っているとすると。

「秘密の部屋は、地下にある」
「えっ?」
「校内のどこかで水道管に破損があるんならどこかが必ずミセスノリスを発見したときみたいに水浸しになるはず。でもあんな大掛かりな水浸しは今まで私の記憶上無かったと思うし、そうすると多分、地下だよ」
「ナマエ……!あなたってそういうところは最高よ!早くハリーに知らせなきゃ!」

そういうところ"は"!?ちょっとハーミー私たちの友情に亀裂が入りそうなことを言うんじゃありません。聞かなかったことにしよう。その辺にあった羊皮紙をビリっと破き、ハーミーはガーッと小さく要点のみ書くと本をバタンと閉じて乱雑に棚へしまい、図書館から出ようとすたすたといってしまうので慌てて追いかける。

「まずハリーに知らせて、それから先生のところへ行くわよ」
「危険スポーツは?」
「クィディッチのこと?そうね、でもこれはとても重要なことよ、残念だけど中止してもらうわ」
「明日から水道止められたらやだなあ」

ずるり、何か湿っているものが床などに擦れるような鈍い音がした。

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