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なにやらハリーがまたやらかしたらしい、と風の噂を耳にした。全く私の耳に内容が入っていなかったが、ハリーとロンの2人はいなかった学校初日、車で空を飛んできたらしいし、ハリーはロックハート教授の件で色々とあるし。更に今回ハリーが、いや、グリフィンドール寮のあのザ危険スポーツチームがスリザリン寮のチームと乱闘したとかなんとか。ちょっと初っ端からテンション高くない?ロンは噂によるとなめくじを吐いたらしい。

昼食のため大広間に行くと、丁度3人が揃っていた。これは好機、と近づくと、ロンと目が合いゲッという顔をされる。

「なめくじ吐いたんだって?超噂だよ」
「うるさいモンキー!」
「そんなカリカリすんなって」

冗談じゃん、と肩を竦めて空いていたハリーの隣に座ると、ハリーはさっと私にお皿をくれた。ありがとう、いい子だね。受け取って色々とよそい食べると、ハーミーのどこか暗い顔に気づく。

「どうしたのハーミー」
「……ううん、なんでもないの」
「なんかあった?ハリー?」
「いや、その……」

マルフォイが、彼女に"穢れた血"って言ったんだ。
こっそり耳元で教えてくれたハリーに、私は首をかしげた。よくわからない、と表すと、彼は差別的用語なんだってと教えてくれた。ハリー自身マグロ育ちなので知らなかったらしいが、魔法界では有名なことらしい。はて、モゥドブロッドというと。

「なっつかしいな、それ前まで言われてたわ。なんかの差別用語だとは思ってたけど、魔法界特有なのか。そりゃわかんないわけだわ」

色々と差別されていた以前と思い出して少し感傷に浸る。私、今は前ほどいじめみたいなの受けてないからな。1年でみんな飽きたらしい。私の反応が何も無かったのもあるだろうけど。ローストビーフをもしゃもしゃと食べながら言うと、がたんと隣の机から音がした。

「なんだと!?」
「ナマエ、誰に言われたんだよ!」
「は? いや……誰だかわかんないけど、色々いたし」
「はあ!?」

立ち上がったのはウィーズリーの双子で、私の言葉に更に知らない人も立ち上がった。なんだいなんだい。

「それ言われて黙ってたのか!?」
「意味わかんなかったし」
「意味って……差別されてたってことはわかってたんだろ!?」
「そんなの常日頃なんだし、いちいち気にしてらんないって」

何より、一応あんたらもその1人ではあったんだからな!苦笑して心の中で言ったつもりだが、口に出ていたらしい。ただし、私の口ではなく、ハーミーの口から。その場が一瞬凍る。

「ナマエは、あなたたちのせいでトロールに殺されかけたのよ。どうしてそんなことが言えるの」
「……そ、れは、」
「ナマエも、どうして……いいえ、いいの、それがナマエだもの。でも私、そんなナマエのことが羨ましいわ」

ちょっと今日のハーミーちゃんポエマー感あるな。俯いたままそう言われ、とりあえずきつい炭酸水を飲んだ。苦味がソースの酸っぱさを覆う。

「ナマエ、どうして何を言われても、何をされても笑っていられるの?」
「……私が、しっかり全部を受け止めてないから、かな」

トマトとレタスのサラダをパンにちょろっと挟んでかぶりつく。唇についたトマトの汁を舐めとり、へらりと笑った。文句の話は聞き流すし、そもそも意味がわかってないことが多い。猿と言われようが、大して気になるわけでもない。なんてったって私は生来の性格がこれだ。ついでに人生経験も、まあ大した差ではないけど、あるっちゃあるわけだし。そんな事情を飲み込んで笑うと、ハーミーは複雑そうに、そう、と小さく言い口を閉じた。ウィーズリー双子は黙って席に座り、戸惑う様子のご友人も同じように席につく。ロンは物言いたげな眼差しを向けてきた。それに肩をすくめると、向こうはため息をついたし、ハリーはそっと私を見たが、私と目が合うとそっと目をそらした。素直に気まずい。

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