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「どうしたの?ナマエ、顔色が悪いよ」
「人生最大のピンチ」

エエッ!?大丈夫!?と大きく驚きおろおろしてくれたネビルに問題ないとへらりと笑ってスープを飲み込むin大広間。
さっきまで図書館で話していたミスターノット先生はスリザリン席にいらっしゃる。ミスターノット大先生は私に言った。癒者とか聖マンゴ病院とか魔法界の基礎中の基礎らしいことを一通り私に説明してから言った。『ヤヌス・シッキー棟は長期入院患者の病棟だ』と。大先生の純血人脈にそこの病棟担当の癒者先生がいらっしゃるらしい。その人が私のことを話していた。
つまり、『あなたが、ヤヌス・シッキー棟に入院予定患者のリストにいるということだ』……だそうで。
ミネストローネの味もろくにわからず、幻聴でミスターノット先生の言葉が繰り返される。……ことだ…とだ……だ……、とセルフエコーもしっかりかかってるレベル。長期入院患者のリストにいるってことは、私がそれだけやばい認識をされてるってわけで。えっなんで?私そんなにやばいことした?と疑問ながらも、やっぱこの前──3年の終わりに私が保健室行きになったことが1番の問題なんだろう、と、おもう。この前階段からすっ転んで保健室行ったら微妙な空気で対応されたし。あのときの微妙な空気はたまたま保健室にいたドラコくんからのだめな子を見るような目によって作られたものではないはずだ。いやアレは階段が悪かったんだって。言い訳じゃないよホントだよ。まあその前にもマダムには既に何度もお世話になってるんですけども。
閑話休題話を戻そう。ノット先生からのご指摘により周囲の私に対する認識のやばさがわかったわけだ。つまり私は今腫れ物みたいなものだ。いや対抗試合とかハリーに比べると劣るから、まあ、あの、思春期のニキビくらいなちっちゃいけどちょっと気になる程度もんだろうと思っておく。問題はさーあ、私がさーあ、記憶がないってことだよ。これは由々しき問題ですよ。入院していた事実は確認され、しかし記憶はなく、重篤患者認識されていて、ノット先生に真顔で「あなたはおかしい」と言われる、これはよくわかんないけどやばいということだけは流石のモンキーでもハッキリとわかりますよ。
確かに最近、記憶が飛ぶことが多かった。クラムくんからの相談の件しかり、DADAでの教師ぶん殴り事件しかり、私はどうも……なんか、妙だ。自分でも感じる奇妙な感じと心地の悪さ。それに加えて両親のことや、そもそもこの魔法界という世界のこと、時間の流れと私の背丈。ミネストローネの残りを一気に胃に流して、髪をぐしゃぐしゃにかき混ぜて頭を振り脳を揺らす。

「ごちそうさまでした!」
「…………ナマエ、どうしちゃったの…?僕に何か出来ることがある?」
「優しいなネビルはぁ〜!大丈夫だよ!」

結局いつまでもやべえおじさんもといムーディ教授の言葉が耳に残る。そろそろ、向き合わなきゃいけないときが来たのかもしれない。


まあちょっとそんな感じでセンチメンタルに考えてたのが悪かったのか。

「ふべっ、は!?うわっ」

一度に色々あって色々な声が出てしまった。簡単に言おう、誰かとぶつかった、と思ったらその人は壁からでてきた、アンドその人はムーディ教授だった、以上だ!大広間で昼食時に頭の端っこにチラついていた存在であるばっかりに私はビビった!それはもうビビった!飛び上がった!そしてそんな私をムーディ教授、いいやムカつくおじさんは鼻で笑った!ムカつく!

「油断大敵!」
「うわ出た……壁からなんてどうしようもないじゃん……」
「魔法使いどこから現れてもおかしくは無いはずだがミョウジ!いつまでマグルのつもりだ!」
「怒んないでよもう…更年期か…」

声が大きいんだよ声が。この距離でそんな大きい声必要ないよ。うーと耳を塞ぎ、油断しててすんませんでしたあと生ぬるい謝罪をしてそのばを去ろうとする。が、そうは問屋が卸さないらしい。がしっと肩を掴まれ、か弱い私はずるずると引っ張られる。遅刻したらどうしよう、罰則か?また罰則か?私はもうホグワーツに存在する罰則全てコンプリートしたのでは?ってくらいやってるぞ罰則。罰則王と言っても過言ではなかろう。誰にも誇れない経歴がまたひとつ増えてしまった……。
ねえ授業遅れるからさあ、なんて言葉をムカつくおじさんは聞いてくれやしない。ずるずると連れていかれるまま階段をあがり、あがり、あがり……ついたのは8階。8階だぞ8階。次の授業の教室は1階。そして鐘は鳴った。慈悲はない。きっと今頃グリフィンドールの寮点がまた減ってる……教師のせいなのになんて酷いんだ……教育委員会に訴えてやる……。

「見よミョウジ!貴様にだけは特別に教えてやろう……ここは必要の部屋だ」
「? …………? えっと、頭の事故かなにかされた過去でも」
「貴様それでも魔法使いか。ここをどこだと思っている!」
「怖いって…なんなの……」

どこってホグワーツの8階の廊下の壁の前だろうよ。なにが油断大敵じゃ絵画も何も無い壁だぞ。きっとムカつくおじさんには私には見えないものが見えているんだろう、きっとそうだわ。試しにぺたぺたと壁を触ってもなにも仕掛けは無い。どっかの石が凹むこともないし、隠れたドアノブがあるわけでもないし、杖を向けたって何もおこりゃしない。ムカつくおじさんもメルヘンの住人なんだな……と彼に目を向けると、ムカつくおじさんは義眼で私をぎょろぎょろと見た。

「杖を出したことは褒めてやろう、貴様の普段の行いからは大いなる魔法使いへの成長だ。だが油断大敵!」
「ウワッびっくりさせんなって」
「ふん、興味があるなら入れ、ここで必要なものへ集中し3回往復しろ」
「やだよ怖い」

そんなので部屋が現れちゃったらマジでオカルト案件だよ!と鳥肌をさすって少し。私は気づいてしまった。そもそも絵画が喋ったりチョコが動いたりポルターガイストとか幽霊が目に見えている時点で充分オカルトであることを……ぅゎ魔法界こゎ……。なおこのあと走って授業へ遅刻したが寮点はしっかり5点引かれた。ムカつく!!!

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