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はあ〜あったまる〜う〜。
スープのありがたみをしみじみ感じながらローブを脱ぐことなくちびちびと温かい料理を食べ温かい飲み物を飲む。アリアは嫌そうに脱ぎなさいと言うがまだ無理だ。部屋に戻ってお風呂に入らない限り無理だ。
というか、それよりだね、隣に座るサーシャの様子を窺う。

「……大丈夫?サーシャいきて」
「さむいの……」
「これブイヤベースだって、美味しいよ、温まるから」
「うん、うん……」

ぼうっとしたままローブを抱きしめるように座るサーシャの様子はどう見てもおかしい。体の冷えすぎか。背中をさすってやりながらスープをよそってやる。アリアがこれも食べなさい、とお皿をこちらに渡す。

「カヴァルマと言うそうよ、ブルガリアの料理ですって」
「美味しそう。アリアは食べた?」
「まだよ、私のもよそってちょうだい」
「はいよ」

唐辛子が入ってるっぽいな。温まるよ、とサーシャの分を置く。しかしサーシャはブイヤベースにも手をつけていないし、飲み物にさえ手をつけていない。
これはおかしくないか、とアリアと目を合わせる。アリアは眉間にシワを寄せた。

「具合が悪いの?なんとか言ったら?」
「……さむい、さむいのよ……」
「ちょいと失礼」

顔を下向きにしているサーシャの額に手を当てる。少しずつ温まってきているもののまだ冷たい私の手が驚いた。めっちゃ熱い。熱じゃん。サーシャが病気になるのは初めてな気がする。アリアに熱がある、と口パクで伝えると、アリアは料理とっておくから医務室へ行きなさい、と言う。あ、はい。寒い寒いと震えるサーシャに仕方がねえ、と私のローブもかけてやり、医務室へ行こうと声をかけて立ち上がる。
大丈夫、寒いけど医務室までなら大丈夫、いつかのハロウィンよりはマシだ、オッケーレッツゴー。
人が増えた大広間をサーシャの肩を寄せさすりながら扉を目指す。と、途中で足を出され思わず踏んずけてしまった。

「っい、何をするんだモンキー!」
「今のは事故でしょ、ごめんて」
「あれがホグワーツ名物のグリフィンドールの野蛮なモンキーさ」
「モンキー?人じゃないか」
「謝れよモンキー!」
「ごめんねごめんねー!」

ダムトランクの人と話すスリザリン生に声を投げながら廊下に出ると、サーシャは崩れ落ちるように私に体重を預ける。うっ、重い……が、頑張るんだ私の腰。よっこいしょ、とサーシャを背負う。おんぶをして階段をゆっくりと降りた。っていうか私いつの間にホグワーツ名物になったんだ。




サーシャを無事医務室へ届け、何故かローブが返されないまま心の中で寒さに泣きながら駆け足で大広間へ戻るとドアのところでハリーたちと会った。

「ナマエ!どこに行ってたの?サーシャと出ていく姿が見えたけど」
「医務室に」
「サーシャ、具合悪いのね。…あなたローブはどうしたの?」
「何故かサーシャと一緒に医務室に。クッソ寒いから中入れて」

僕のローブ貸そうか?とハリーに言われるが君が寒いからと遠慮する。それよりも大広間に入れてくれ、と行こうとしたところでおじさんがぶつぶつ言いながら集団出てくるところだった。タイミングが悪いなもう!奥に行けないじゃん!
しかし出る人が先なマナーだ、どうぞと横に避けるとおじさんはありがとう、と言うがハリーの顔を見て止まってしまう。え?何?何かあんの?私もハリーを見るが、ハリーはきょとんとし私と目が合うとにっこり笑った。あらかわいい、じゃねえよおっさんはよどけ。おっさんの後ろのダムトランクの生徒たちもはよ急かしてくれ。出口は!寒いんです!なんで時が止まってしまったんだ、と足踏みをする。さっきの、という声が聞こえた。

「さっきの子ヴぁ大丈夫なのか?具合が悪そうだった」
「え?あ、ああ、医務室に届けてきたんで大丈夫だと思います、けど……ああ、スリザリンのとこにいた人か」
「君ヴぁモンキーなのか?」
「人類のはず」

真面目な顔をするダムトランクの人にへらりと笑いながら返せば、ハリーが人間だよ、当たり前じゃないか、と口を尖らせながら否定した。
ハリーの声におっさんはハッとした顔で君は、と独り言のように言う。

「ハリー・ポッターだ」
「げっ」

授業以外で会いたくない人ナンバーワンが奥からやって来てしまった。しかしなにやら雰囲気が不穏、やべえおじさんの義眼はおっさんを睨みつけているようだった。対しておっさんは顔を青ざめさせる。不穏。

「お前は!」
「わしだ」

コントかよ。しかし神々の悪戯か?と茶化せない雰囲気、凄みのある声と蒼白な顔、まるで敵同士だ。どうなってんだ。やべえおじさんは、ハリーにいうことがないならそこを退け邪魔だ、と私の心の代弁をしてくれ、おっさんの方はハッとして生徒を連れて出ていく。また、とちろっと話しただけの1人に声をかけられ、ひらりと手を振る。無愛想だが天然のようだ。
さてやっとご飯の続きだ、と奥へ行こうとすればロンにがしりと肩を掴まれる。

「君クラムとどんな関係なの!?」
「誰」
「さっき話してただろ!」
「………さっき話した関係?」

はあ!?と何故かキレられ、負けじとハアーン!?と言い返し、手を振り払って奥へ行こうとすれば今度はやべえおじさんにステッキで妨害される。これは怖い。打って変わってひやりとした心地。

「スネイプが呼んでいた」
「うっそぉ……まだちょっとしか食べてない……」
「奴は既に地下に行ったぞ」
「ちっくしょう!!!」

この後地下室の寒さに震えながらお腹の虫を鳴らしてめちゃくちゃ鍋磨いて反省文書いた。おっさん許すまじ。

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