02

赤と金色がイメージカラーらしい寮は、やはりというか大体がその色で統一されていた。
そして、寮生もどうやら赤に合った、アツく元気な子たちばかりらしい。そう気づいたのはよくわからないままイルカだかグリフォンだかな寮に入った翌日の朝だった。
寝ぼけ眼をこすりながらのろのろと談話室に出れば、私と同じように起きてきた新入生を大きな破裂音が出迎えた。思わず帰りてえ、と呟いたのはご愛嬌。というかこれいつ帰れる、というよりは目覚めるんだよ。誘拐犯早く私を夢の中から解き放て。これが魔法とか言われたら現実なのかも怪しいじゃないか、まさか変な実験に使われてたり…。

「ミスミョウジ!よろしいですか、杖はこう持つのです、そのような持ち方をしてはなりません!」

どこかで見覚えのあるマダムに怒られ、すみませんと言い私は杖を持ち直した。ぶっちゃけただの棒切れにしか感じられない件な。

このお城のような場所は、ホグワーツという名前の完全寮制の学校だと知ったのがついこの間、入学して1ヶ月が経った頃だ。
やはり私は想像通りめちゃくちゃ若返り、こうして11歳に紛れて寮生になっている。

どうやらここは本当に魔法を使う、魔法界というやつらしい。各先生が色々な魔法をお手本で使用する度に、なんてファンタジーと呟いてしまうのはもうほとんど癖だ。
だがしかし、なんてったってファンタジー、in私。どう考えても人選ミスもいいところだ。一日に各先生から5回以上注意を受けてから、私は果てしなくそう思うようになった。

杖の持ち方、呪文の唱え方、魔法薬の作り方に魔法生物の扱い方。周りを見ていれば私のようにド初心者は確かにいるようだが、皆真面目なのか不安なのか、しっかり予習をする上にそもそも私に課されたハンデ、言語という壁がない。

と、いうのも。私はどうやら、言葉を理解できるときと出来ないときがあるらしい。
例えば、入学式のあの日は余裕だった。話せたし、聞こえた。がしかし、寝起きのぼやーっとした状態や、寝る前の心底眠い状態、あとは他のことに集中している際には全くと言っていいほどにわからなくなるのだ。
私の考えとして、通常モードが英語に変わるが、私自身の状態によっては日本語にチェンジされるのではないか、という仮想がある。
あとは文字。これはもうどの状態関係なくダメダメだ。本当にわからない、めちゃくちゃ達筆な筆記体なんてわかるわけがない、あと魔法用語の綴りとかマジ意味不すぎて吐き気がするレベル。

そんな感じでだるだるしてる基本授業では怒られっぱなしの無愛想な小娘に友達ができるわけもなく、絶賛ぼっち生活満喫中である。同室の子にもめちゃくちゃ壁を感じる日々。逆にごめんよ。

「ミスミョウジ、貴様の耳は何語が聞き取れるのかね?英語は通じないのか?」
「今は大丈夫でーす」
「グリフィンドール3点減点」

スパン、いい音を立てて頭を叩かれ、寮点を減点された。
その様子を合同授業の相手、スリ……スリ、なんちゃらが嘲笑する。というか寮監のこのスネイプ先生が嘲笑してるんだから仕方がない。べっつにぃ?そんな痛くもないですしぃ?強がり乙。

なんだかよくわからない仕組みなのだが、ここはそれぞれ寮が対抗で点取り合い大会を年中開いているらしい。そして年の最後、寮点が一番多い寮が優勝なんだとか。そんな大事な点を、私はほぼ毎日バリバリさげている。そこも嘲笑の一つであろうけど、それにしたってこのスネイプ先生は嫌味なんだかいい先生なんだか。
私がてんでダメダメのヘボヘボだとわかった初めの授業から、実験となるとスネイプ先生は私を皆のようにペアで組ませての実験を、ぼっちでさせる。が、私のそばを離れない。
このことを周りはどうやら私への教育的嫌がらせだと思っているらしいが……、私としてはマンツーマンで教えてくれているのと同じで、とてもありがたい。だってこの魔法薬とかマジ意味わからん。アバウトだし、色すぐ変わるし、爆発するし。そこも治癒魔法とかねえのかよ、と思ってしまった。今でも思ってる。そしておそらく一生思う。
ちなみにこのスネイプ先生はスリなんちゃら寮の寮監らしく、ゴリッゴリに依怙贔屓万歳している。なんでもスリなんちゃら寮からは滅多に点数をひかないんだとか。逆に私も所属しているイルカだかグリフォンだか寮は敵視しており、まあ生徒間の中の悪さの発端は教師みたいな?そんなノリでガンガン点をひいていくスタイルらしい。特にうちの寮所属の眼鏡をかけた男の子には嫌がらせが多いっぽい。彼との関係だとかはこちらにはよくわからんが、見ている限りはなんだこのおっさん感ハンパない。しかも生徒を華麗に無視していく。魔法界のPTAは優しいらしい。日本でこんなんやったら今の世の中モンスターペアレンツ様が激おこするぞ。かの暴君を減給させに来るぞ。

「失礼ながら、ミスミョウジは本当にミスなのかね。切り方が雑すぎますぞ。それとも、やはりただの猿頭なのですかな?」

それにしてもこの専用の包丁切れ味わりー。振り下ろすようにして、どこから調達しているのかは知らないが毒々しい紫色のイモムシを切っていればまあお小言が飛んでくる飛んでくる。姑か。
その度にグリフィンドールからは苛立ちと笑いの目を向けられ、スリザリンからは明確な嘲笑をいただく。

猿、モンキー。その類の表現は私によく使われる言葉の一つで、まあそのままだ。日本人だもの、黄色人種ですとも。そこは、ぶっちゃけ言うと対して傷つかない。むしろ当たり前のような気がするし、まあ人種差別をした者は人種差別に泣くのだとよくわからない考えを掲げて放置である。

とりあえず、私は雑にならないようにイモムシを見事にみじん切りにした。怒られた。

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